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施設への入居が決まると、必ず出てくるのが「お金をどう動かすか」という問題です。毎月の利用料はご本人の口座から引き落とされますが、通帳や印鑑の場所が分からない、暗証番号を聞けない、判断が難しくなってきている——。ご相談の場で、費用の話と同じくらい多くうかがうお困りごとです。この記事では、ご本人の判断能力の段階に応じた3つの備え方と、きょうだいの間で行き違いを生まないための記録の残し方をご説明します。
この記事の要点
目次
お金の管理の備え方は、いまご本人がどこまでご自身で判断できるかによって、選べるものが変わります。まずは現在地を確かめるところから始まります。
図13つの段階と、それぞれで取れる手立て
ここでお伝えしたいのは、段階1でできることの幅が、いちばん広いということです。ご本人がご自身で決められるうちに話しておけると、あとの選択肢が残ります。
お元気なうちであれば、次のような備えが取れます。
元気なうちに取れる手立て
あわせて、この段階で情報を整理しておくことをおすすめしています。取引のある金融機関と口座、年金の受取口座、加入している保険、不動産、そして毎月の固定的な支出。これを一覧にしておくだけで、いざというときの動きがまったく変わります。
切り出し方に迷われたら
「お金の話をすると、財産を狙っていると思われそうで」というお気持ちは、よくうかがいます。ご自身のことから話しはじめるのがひとつの方法です。「うちも、いざというときのために整理しておこうと思って。お父さんはどうしてる?」という入り方であれば、身構えられにくくなります。あるいは、施設の見学や費用の相談をきっかけにすると、自然な流れで話に入れます。
物忘れが増えてきた、支払いを忘れることがある。けれども話し合いはできる。この段階では、日常生活自立支援事業という仕組みが使えます。
図2日常生活自立支援事業でしてもらえること
お金の出し入れの手伝い
生活費の払い戻し、公共料金や家賃の支払いなど、日々のお金の管理を支援員が手伝います。定期的にご自宅を訪問する形が一般的です。
通帳や証書のお預かり
通帳、印鑑、権利証などを安全な場所で保管します。紛失や、訪問販売などによる被害を防ぐ意味もあります。
福祉サービスの利用の相談
介護サービスの契約や、書類の手続きについて助言を受けられます。不動産の売却や相続などの大きな判断は対象外です。
窓口は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会です。利用には契約が必要で、ご本人が仕組みを理解して契約できることが前提になります。ここが、この事業を使えるかどうかの分かれ目です。利用料は自治体によって異なりますが、比較的少額に設定されています。地域包括支援センターでも、この事業の紹介を受けられます。
ご本人がご自身で契約や財産の管理をなさるのが難しくなった段階では、成年後見制度が中心になります。家庭裁判所に申立て、ご本人を支える人(後見人など)を選んでもらう仕組みです。
申立てから開始まで
時間がかかるため、施設への入居を急いでいる場面では間に合わないことがあります。この場合、当面はご家族が立て替えて支払い、後見の開始後に精算するという進め方をとることが多くあります。
「お金の段取りが決まらず、施設の話が進みません」
費用の支払い方が固まらないまま、住まい探しが止まってしまうご家族は少なくありません。相談員は、成年後見の手続き中でも受け入れているホーム、支払い方をご相談できるホームを把握しています。制度の窓口へのつなぎ方も含めて、順番から一緒に整理します。ご相談は何度でも無料です。
実際にご相談いただいた方のお話はお客様の声でご覧いただけます。
ご相談のなかで、行き違いの起きやすい点をまとめます。
図3思っていたことと、実際
よくある思い込み
「家族が申し立てれば、家族が後見人になれる」「後見人がつけば、身元保証人も兼ねてもらえる」「必要がなくなったら、やめられる」「家を売って費用にあてられる」
実際のところ
後見人を選ぶのは家庭裁判所で、専門職が選ばれることもあります。身元保証人を兼ねることは権限に含まれません。原則としてご本人がお亡くなりになるまで続きます。ご自宅の売却には、別途家庭裁判所の許可が要ります。
とくに2つ目は、施設の契約の場面で問題になりやすいところです。後見人が付いていても、別に身元引受人を求められることがあります。詳しくは老人ホームの身元保証人がいないときでご説明しています。
後見が付くことの利点も、あわせて
手続きの負担ばかりが目に入りますが、施設の側から見ると「利用料が確実に支払われる」という大きな安心材料になります。実際に、後見人が付いていることを前提に、保証人なしで受け入れられた例は少なくありません。また、ご家族が財産に手を触れずに済むため、きょうだい間で疑いが生じにくくなるという面もあります。
介護をめぐるご家族の行き違いは、その多くがお金にまつわるものです。防ぐ手立てはひとつ、記録を残すことです。
残しておくと、あとが楽になるもの
記録は、疑いをかけられたときの備えというより、お互いに気を遣わずに済むための道具です。介護を担っている方にとっても、「ちゃんと見せられる」という状態は気持ちが楽になります。定期的にきょうだいへ共有しておくと、なお安心です。
費用をどう分担するかについては、まずご本人の年金と預貯金で賄えるところまでを確かめ、足りない分をどうするかを話すという順番にすると、話がまとまりやすくなります。おおよその金額は費用シミュレーションで確かめられます。
ご本人名義の口座からの引き落としが一般的です。手続きにはご本人の意思確認が必要になりますので、入居の契約と同じタイミングで進めるのがおすすめです。ご本人が窓口へ行けない場合の扱いは金融機関によって異なりますので、事前にお尋ねください。
「診断された瞬間に止まる」というものではありません。ただし、金融機関がご本人の判断能力の低下を把握した場合、ご本人保護のために出金が制限されることがあります。近年は、施設の費用など使いみちが明らかな場合に、家族からの引き出しに応じる取り扱いを設ける金融機関も出てきています。まずは取引のある窓口にご相談ください。
いいえ。大きな財産の処分や、施設の契約が必要な場面で、他に手立てがないときの仕組みとお考えください。日常のお金のやりくりだけであれば、段階2の日常生活自立支援事業で足りる場合もあります。何が必要かによって選び方が変わりますので、地域包括支援センターや社会福祉協議会にご相談ください。
ご本人が判断できる状態であれば、ご本人の意思で売却できます。判断が難しい場合は成年後見が必要で、お住まいだった家(居住用不動産)の売却には家庭裁判所の許可が要ります。なお、売却された翌年は所得が増え、介護保険の負担割合が上がる場合がありますので、あわせてお含みおきください。
ご本人の年金額、預貯金、施設の月額を並べて、何年もつかを計算します。私たちがご相談をお受けするときも、必ずこの計算から入ります。足りない見込みであれば、費用を抑えた施設や公的な制度を組み合わせてお探しします。年金だけで入れる老人ホームはある?もあわせてご覧ください。
親御さんのお金の管理は、いまどの段階にあるかで取れる手立てが変わります。ご本人が判断できるうちなら選択肢は多く、判断が難しくなってからは成年後見が中心となり、時間も費用もかかります。
ですから、気づいた時点で情報を整理しておくことが、最も効く備えです。取引のある金融機関、年金の受取口座、保険、毎月の支出。一覧にしておくだけで、いざというときの動きが変わります。
そして、立て替えた費用は記録に残す。これはきょうだいの間の行き違いを防ぐと同時に、介護を担うご自身を守ることにもつながります。お金の段取りで住まい探しが止まってしまう前に、どうぞお声がけください。
この記事の監修者
東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。相談員のご紹介はこちら
出典・参考
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。代理人の届出や口座の取り扱いは金融機関によって異なります。日常生活自立支援事業の利用料や内容は市区町村の社会福祉協議会によって異なります。成年後見制度のお手続きや、家族信託の設計にあたっては、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。
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