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「冬になると、親がひとりでお風呂に入るのが心配」。そんなときに知っておきたいのが、ヒートショック(急な温度の変化で血圧が大きく動いて起きる体の不調)です。入浴中の事故の大きな原因と考えられていて、とくに高齢の方に多く起きます。この記事では、ヒートショックのしくみと数字、起きやすい人・場所・時期、入浴の前と入浴中の対策、家の暖め方、離れて暮らす親のために家族ができることを、公的な資料をもとにまとめました。

この記事の要点
目次
ヒートショックは、急な温度の変化によって血圧が大きく上がったり下がったりして、体に起きる不調のことです。日本赤十字社は、めまいや立ちくらみ、吐き気などの症状をあげ、重くなると心筋梗塞や脳卒中の危険も高まり、失神などの意識障害から浴槽での溺水につながるおそれがあると説明しています※1。
「ヒートショック」は医学用語ではありません。そのため、亡くなった方の死亡診断書には「ヒートショック」とは書かれず、「溺死」や「病死」として記録されます※2。ヒートショックが原因の死亡だけを数えた正確な統計はなく、入浴中の溺死や、入浴中の死亡の数から全体をつかむことになります。
冬の家では、暖房のない脱衣所や浴室の温度が10℃以下になることも珍しくありません※2。暖かい居間から寒い脱衣所に移って服を脱ぐと、体が冷えて血管が縮み、血圧が急に上がります。そのあと温かい湯につかると、今度は血管が広がって血圧が急に下がります。この急な低下が、失神を起こす原因のひとつです※2。
図1入浴で血圧が大きく動く流れ(イメージ)
※東京都健康長寿医療センター(2013年)と日本赤十字社(2025年)の説明をもとにした流れのイメージです※1※2。血圧の動き方には個人差があります。
東京都健康長寿医療センターは、浴槽の中で失神して溺れて亡くなる例を、入浴中の急死の典型的な例としています※2。消費者庁も、冬に溺れる事故が起きる原因として、暖かい室内と寒い脱衣所や浴室との温度差による急な血圧の変動と、熱いお湯に長くつかって体温が上がることによる意識障害をあげています※4。
厚生労働省の人口動態統計によると、2025年に浴槽で溺れて亡くなった方は8,031人で、そのうち65歳以上の方が7,631人(95.0%)でした※3。同じ年に交通事故で亡くなった65歳以上の方は2,019人で、浴槽での死亡はその約3.8倍にあたります。
図265歳以上の浴槽での死亡と交通事故による死亡
※厚生労働省「人口動態統計(確定数)」の各年の表から数えました※3。浴槽での溺死は「浴槽内での溺死及び溺水」と「浴槽への転落による溺死及び溺水」の合計で、場所を問わない数です(家と居住施設の浴槽に限ると、2025年は7,081人)。交通事故は人口動態統計の数で、警察庁の交通事故死者数とは数え方が違います。棒の右端は8,000人です。
浴槽で亡くなる65歳以上の方は、2021年の5,097人から、2025年には7,631人に増えました。消費者庁も毎年、冬の入浴中の事故に気をつけるよう呼びかけています※4。
ただし、この数は「溺死」として記録された方だけです。東京都監察医務院が東京都23区で入浴中に亡くなった方を調べた資料では、2022年の1,704件のうち、溺水は196件で、病死が1,323件と大半を占めていました※5。入浴中に心臓や脳の病気で亡くなる方も含めると、入浴中の死亡は統計の溺死より多いと考えられます。東京都健康長寿医療センターは、2011年の1年間に、ヒートショックに関連した入浴中の急死を約17,000人と推計しています※2。
入浴中の事故は、寒い季節に集中します。東京都監察医務院の資料で、東京都23区の入浴中の死亡を月ごとに見ると、2018〜2022年の平均で1月が274.2件といちばん多く、いちばん少ない9月(47.8件)の約5.7倍でした※5。
図3東京都23区の入浴中の死亡(月別・2018〜2022年の平均)
※東京都監察医務院「東京都23区における入浴中の死亡者数の推移」(2023年11月)の、2018〜2022年の5年間の平均です※5。脱衣所や洗い場も含む、入浴の行為全般での死亡の数です。棒の右端は300件です。
11月から増えはじめ、12月から2月が山になり、4月ごろまで多い状態が続きます。東京消防庁の資料でも、2023年に溺れる事故で救急搬送された65歳以上の方は460人で、ほとんどが浴槽で起きていました※9。冬は、暖かい居間と寒い脱衣所や浴室との温度差が、いちばん大きくなる季節です。
ヒートショックは、だれにでも起こりえますが、とくに次のような方と場面で起きやすいとされています。
消費者庁は、入浴の前と入浴中に気をつけたいことを、次の9つにまとめています※4。どれも、今日から始められることです。
図4入浴の前と入浴中の9つのポイント
※消費者庁「年末年始、高齢者の事故に注意しましょう!」(2025年12月)の項目を、わかりやすく言い換えました※4。

湯の温度と時間の目安として、消費者庁はこれまで「湯温は41度以下、湯につかる時間は10分まで」をあげてきました※6。日本赤十字社も、同じ目安をすすめています※1。給湯器の温度の表示だけに頼らず、温度計やタイマーを使うと、目に見えて確かめられます※4。
消費者庁は、高齢の方がいる家庭では、入浴していることを気にかけておき、「時間が長い」「音がまったくしない」「急に大きな音がした」など、いつもと違うと感じたら、ためらわずに声をかけるようすすめています※4。入浴の前に「いまから入るね」と一声かけてもらうだけでも、気づくのが早くなります。
ヒートショックを防ぐ基本は、家の中の温度差を小さくすることです。

世界保健機関(WHO)は、住まいと健康のガイドラインで、寒い季節の室内の温度として18℃以上を強くすすめています。高齢の方や子ども、心臓や肺の持病がある方には、それより高い温度が必要な場合があるとしています※7。何度を下回ると体に悪いかという正確な線は決められていませんが、寒い家を暖めることには健康によい効果が見込まれる、という考え方です。
実際の家はどうでしょうか。断熱の改修を予定している約2,000世帯を国土交通省の調査で調べたところ、冬に家にいる間の居間の平均室温は16.7℃で、18℃未満の家が61%、脱衣所は平均12.8℃で、18℃未満の家が89%でした※11。日本全体の割合ではありませんが、脱衣所が寒い家が多いことがわかります。居間か脱衣所が18℃未満の家に住む方は、入浴事故の危険が高まるとされる42℃以上の熱めのお湯に入る確率が1.8倍高い、という結果も出ています※12。
窓の断熱(内窓をつけるなど)や浴室の改修は、家の中の温度差を小さくする根本的な方法です※2。こうした改修には、国や自治体の補助が出ることがあるので、お住まいの市区町村に確かめてみてください。
なお、介護保険の住宅改修(支給の上限は20万円)は、手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床への変更、引き戸などへの扉の取り替え、洋式便器などへの取り替えと、それにともなう工事が対象で、浴室暖房や断熱の工事は対象になりません※8。浴室の手すりや段差の解消は対象になるので、入浴の安全のために使えます。くわしくは、介護保険の住宅改修をご覧ください。
ひとり暮らしの親が入浴中に倒れると、見つかるまでに時間がかかりがちです。離れて暮らす家族にも、できることがあります。
どのサービスが使えるかは、担当のケアマネジャーに相談してみてください。まだ介護保険を使っていない場合は、地域包括支援センターが相談の窓口になります(地域包括支援センター(包括)とは)。
浴槽でぐったりしている人を見つけたときは、次の手順で、できる範囲で対応します※1※10。
図5浴槽で倒れている人を見つけたときの手順
※日本赤十字社(2025年12月)の手当と、消費者庁(2020年11月)の注意喚起の手順をもとにまとめました※1※10。
胸骨圧迫は、胸の真ん中を、1分間に100〜120回の速さで、約5cmの深さまで押します※9。いざというときに慌てずにすむよう、家族で手順を確かめておくと安心です。
暖房や断熱で家の中の温度差を小さくするのが基本ですが、古い家では限界があることもあります。親がひとりで冬のお風呂を使うのが心配になってきたら、住まいを移すのも選択肢のひとつです。
介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームでは、介護が必要な方の入浴を職員が手伝います。サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームでは、介護が必要な方は訪問介護などのサービスを使って入浴します。住まいの種類ごとの違いは、老人ホーム・高齢者施設の種類一覧でまとめています。
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急な温度の変化で血圧が大きく上がったり下がったりして、体に起きる不調のことです。めまいや立ちくらみのほか、重くなると失神や心筋梗塞、脳卒中につながることがあります。冬の入浴のとき、とくに高齢の方に多く起きます。
医学用語ではありません。そのため死亡診断書には「ヒートショック」とは書かれず、「溺死」や「病死」として記録されます。ヒートショックが原因の死亡だけを数えた正確な統計はなく、入浴中の溺死や入浴中の死亡の数から全体をつかむことになります。
めまいや立ちくらみ、吐き気などがあげられます。重くなると、失神などの意識障害が起き、浴槽で溺れることにつながるおそれがあります。心筋梗塞や脳卒中の危険も高まるとされています。
暖房のない脱衣所や浴室で起きやすく、トイレも冷えやすい場所のひとつです。暖かい居間から寒い脱衣所に移って服を脱ぎ、温かい湯につかる、という急な温度の変化が重なるためです。
冬に多く、東京都23区の入浴中の死亡は1月がいちばん多くなっています(2018〜2022年の平均で274.2件)。いちばん少ない9月の約5.7倍です。11月から増えはじめ、4月ごろまで多い状態が続きます。
消費者庁や日本赤十字社は、湯の温度は41℃以下、湯につかる時間は10分までを目安にするようすすめています。熱いお湯に長くつかると、体温が上がって意識がもうろうとすることにもつながります。
東京都健康長寿医療センターは、気温が下がりきる前の、夕食前・日没前の入浴をすすめています。食事の直後や飲酒のあと、薬を飲んだあとの入浴は避けましょう。
何度なら安全という決まった数字はありません。WHOは、寒い季節の室内の温度として18℃以上を強くすすめていて、高齢の方にはそれより高い温度が必要な場合があるとしています。居間との温度差を小さくするのがポイントで、温度計を置いて比べると目安になります。
トイレも冷えやすく、居間との温度差が大きくなりやすい場所です。東京都健康長寿医療センターは、脱衣所や浴室とあわせて、トイレにも暖房器具を置くことや断熱の改修をすすめています。
入浴する時間帯を決めてもらい、その前後に電話やメッセージで様子を確かめる方法があります。帰省のときに脱衣所や浴室の寒さを確かめ、暖房器具や温度計を用意するのも役に立ちます。介護保険のサービスを使っている方なら、デイサービスや訪問入浴で入浴する方法もあります。
顔をお湯から出して大声で助けを呼び、浴槽から出せないときはすぐに栓を抜いて湯を抜きます。すぐに救急車を呼び、反応や呼吸がなければ胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めます。体はバスタオルなどで包み、冷えないようにします。
介護保険の住宅改修は、手すりの取り付けや段差の解消など6種類が対象で、浴室暖房や断熱の工事は対象になりません。暖房器具や断熱の改修は自費になりますが、窓の断熱などには国や自治体の補助が出ることがあります。
ヒートショックは、急な温度の変化で血圧が大きく動き、めまいや失神、心筋梗塞などにつながるものです。浴槽で亡くなる65歳以上の方は交通事故の約3.8倍にのぼり、とくに冬、1月前後に多く起きています。
対策の基本は、脱衣所や浴室を暖めて温度差を小さくし、湯は41℃以下・10分までを目安にすること、食後すぐや飲酒のあとの入浴を避けること、家族に一声かけることです。離れて暮らす親には、入浴の時間に合わせた連絡や、冬の間のデイサービスなども考えられます。寒い家での暮らしが心配になってきたら、住まいの選択肢も一緒に考えてみてください。
この記事の監修者

東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。相談員のご紹介はこちら
出典・参考
※本記事は、2026年11月時点の公的な資料をもとに、介護の相談の立場からまとめたものです。持病のある方の入浴や体の不調については、かかりつけ医にご相談ください。
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