在宅での介護が限界に近づき、施設を提案したとたん「絶対に家を出ない」と拒まれる。ご家族にとって、これほど行き詰まる場面はありません。しかしこの拒否は、多くの場合説得の技術ではなく、言葉の裏にある気持ちを扱えるかどうかで結果が変わります。現場で実際に効果があった進め方をご紹介します。
この記事の要点
目次
まず前提として知っておいていただきたいのは、施設入居を拒むのは自然な反応だということです。
何十年も暮らした家を離れ、知らない場所で、知らない人たちと暮らす。これは誰にとっても大きな決断です。まして高齢になるほど、環境の変化への不安は大きくなります。「わがままを言っている」と捉えると、話はこじれます。
そして、もう一つ。ご家族の側にも罪悪感があることが多いものです。「親を施設に入れる」という言い方に自分自身が引っかかっているうちは、その迷いが相手にも伝わります。施設は、ご本人が安全に暮らし、ご家族が介護を続けられるための選択肢のひとつ。この整理ができていると、話し方が変わります。
「行きたくない」という一言には、たいてい次のいずれかが隠れています。どれなのかを見極めることが、話を進める鍵です。
図1「行きたくない」の裏にある5つの気持ち
① 住み慣れた家を離れたくない
最も多い理由。家への愛着、仏壇、庭、近所の付き合い。ご本人にとっては人生そのものです。
② 見捨てられるのではないかという不安
この不安が根にある場合、設備や食事をいくら説明しても響きません。必要なのは「これからも関わり続ける」という確約です。
③ 自尊心
「まだ人の世話にならなくてもやれる」。できないことを並べて説得すると、逆効果になります。
④ お金の心配
事実に基づく心配なので、具体的な数字を示すことで解消できることがあります。
⑤ 単純に、よく知らない
暗い・自由がない、といったイメージ。実際に見れば印象が変わることも多くあります。
※どれなのかを見極めることが、話を進める鍵になります。それぞれの詳しい背景は、この下でご説明します。
最も多い理由です。家そのものへの愛着、仏壇、庭、近所の付き合い。ご本人にとっては人生そのものです。
「もう会いに来てもらえなくなる」「家族に迷惑をかけているから追い出される」。この不安が根にある場合、施設の設備や食事をいくら説明しても響きません。必要なのは「これからも関わり続ける」という確約です。
「自分はまだ人の世話にならなくてもやれる」。特に、これまで家族を支えてきた自負がある方ほど強く出ます。できないことを並べて説得すると、逆効果になります。
「そんなお金はない」「子どもに負担をかけたくない」。これは事実に基づく心配なので、具体的な数字を示すことで解消できることがあります。
施設に対して、暗い・自由がない・閉じ込められる、といったイメージを持っている方は少なくありません。実際に見れば印象が変わることも多くあります。
図2避けたい伝え方と、代わりの伝え方
避けたい伝え方
受け入れられやすい伝え方
※それぞれの詳しい理由は、この下でご説明します。
「お母さんはもう一人では無理だから」ではなく、「私が心配で、仕事も手につかない」と伝えます。ご本人を否定せずに、状況を共有できます。「子どもに迷惑をかけたくない」という気持ちが強い方ほど、この言い方は届きます。
「入居する」ではなく、「1か月だけ試してみて、合わなければ帰ってきていい」。実際、有料老人ホームには入居後90日以内の解約について前払金が返還される特例(いわゆる90日ルール)があり、この提案は嘘ではありません。
家族が言うと反発しても、かかりつけ医やケアマネジャーの言葉なら聞く——これは非常によくあることです。事前に事情を伝え、専門職から話してもらう場を設けるのは有効な方法です。
「入る前提」ではなく「見るだけ」で誘います。食事が評判のホームなら、試食を目的に行くのも手です。百の説明より、実際に見た印象が判断を変えます。
「年金の範囲で入れる施設もある」「使える軽減制度がある」と具体的に示します。年金だけで入れる老人ホームはある?もご参照ください。
効果があった一言
ご家族から伺うなかで、繰り返し聞くのが次のような伝え方です。
「これからも毎週会いに行くよ。家にいるより、会える時間は増えると思う」
施設に入ることが「関係が切れること」ではないと伝わると、拒否の理由の多くが薄れます。
見学の同行も承ります
ご本人が納得されないまま話が止まっている、という段階でのご相談も多くいただきます。相談員が見学に同行し、ご家族が聞きにくいことをお尋ねします。ご相談・見学同行は何度でも無料です。
いきなり入居を目指さず、階段を用意するのが最も成功率の高い進め方です。
図3いきなり入居を目指さず、階段を用意する
※この階段を上るには時間がかかります。だからこそ、限界を迎える前に動き始めることが大切です。切羽詰まってからでは、段階を踏む余裕がありません。
この階段を上るには時間がかかります。だからこそ、限界を迎える前に動き始めることが大切です。切羽詰まってからでは、段階を踏む余裕がありません。
次のような状況があれば、ご本人の同意を待っている場合ではありません。
図4この状況なら、同意を待っている場合ではありません
※ケアマネジャーや地域包括支援センターに率直にご相談ください。緊急性が認められれば、ショートステイの活用や施設入所の調整で動いてもらえることがあります。
この場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターに率直に相談してください。緊急性が認められれば、ショートステイの活用や施設入所の調整で動いてもらえることがあります。
認知症が進み、ご本人が状況を正しく理解できない状態であれば、ご家族が判断せざるを得ません。それは見捨てることではなく、責任を引き受けることです。契約や資産の手続きが必要になる場合は、成年後見制度の利用も検討します。
最後にお伝えしたいのは、ご本人の意思と同じくらい、介護するご家族の生活も大切だということです。介護する側が倒れてしまえば、ご本人の生活も守れません。「本人が嫌がるから」と限界まで抱え込む必要はありません。
渋々でも入居が決まったら、次のことがその後の適応を大きく左右します。
施設入居の拒否は、説得で押し切るものではありません。「行きたくない」の裏にある気持ちを見極め、そこに応えることで、多くの場合は道が開けます。
そして、階段を用意すること。デイサービス、ショートステイと段階を踏めば、抵抗はぐっと小さくなります。そのためには、限界を迎える前に動き始める必要があります。
話が止まってしまっている段階でも、どうぞご相談ください。見学に同行し、ご本人の不安に一つひとつお答えすることで、進み始めることがあります。
この記事の監修者
東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。
出典・参考
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。契約の解除に関する取り扱いは施設ごとに異なりますので、重要事項説明書および契約書でご確認ください。ご本人の状態に関する判断は、主治医やケアマネジャーにご相談ください。
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