「認知症でも入れる施設はありますか」——よくいただくご質問ですが、実はこの聞き方では答えが得られません。現在、高齢者施設の入居者の多くが何らかの認知症の症状を持っており、「認知症だから入れない」という施設はほとんどないからです。本当に確認すべきなのは、どの症状まで対応できるのかという一点です。
この記事の要点
目次
施設に電話して「認知症なのですが入れますか」と尋ねると、たいていは「対応しています」という答えが返ってきます。しかしその後、状態を詳しく伝えた段階で断られる——これがご家族を消耗させるパターンです。
認知症そのものが問題なのではありません。施設が受け入れを判断しているのは、認知症に伴って現れる個々の症状に、自分たちの人員体制で対応できるかです。夜中に何度も外に出ようとする方と、穏やかに過ごされる方とでは、必要な人手がまったく違います。
ですから最初の問い合わせでは、診断名だけではなく、具体的な様子を伝えてください。「アルツハイマー病です」だけではなく、「夜間に2〜3回起きて玄関に向かうことがある」「同じ話を繰り返すが、身の回りのことはご自身でできる」といった伝え方です。これだけで、無駄な見学と落胆を大幅に減らせます。
図1最初の問い合わせで、どう伝えるか
診断名だけを伝えると
たいていは「対応しています」と返ってきます。しかし状態を詳しく伝えた段階で断られる——これがご家族を消耗させるパターンです。
具体的な様子を添えると
これだけで、無駄な見学と落胆を大幅に減らせます。
認知症のケアを考えるうえで、施設側が見ているのはおおむね次の3段階です。医学的な重症度分類とは別に、「どれだけ人手が要るか」という視点で整理しています。
図23つの段階と、候補になる施設
※医学的な重症度分類とは別に、「どれだけ人手が要るか」という視点で整理したものです。それぞれの詳しい様子は、この下でご説明します。
物忘れはあるものの、食事・入浴・排せつは自分でできる。日付や場所が分からなくなることがあり、服薬管理や金銭管理には支援が必要。この段階なら、選べる施設の幅は最も広い状態です。サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームも候補になります。
着替えや入浴に手助けが必要になり、トイレの場所が分からなくなることも。徘徊や物盗られ妄想、昼夜逆転といった行動・心理症状(BPSD)が現れやすいのもこの時期です。グループホームや、認知症ケアに力を入れている介護付有料老人ホームが中心的な選択肢になります。
意思疎通が難しくなり、食事・排せつを含めた全面的な介護が必要になります。嚥下(えんげ)機能の低下や、寝たきりに近い状態になることも。介護付有料老人ホームや特別養護老人ホームが主な候補となり、医療的ケアが加わる場合は介護医療院も視野に入ります。
「今の状態」ではなく「1〜2年後」で考える
認知症は進行します。今の状態で入れる施設を選ぶと、症状が進んだときに退去を求められ、ご本人に大きな負担のかかる住み替えが発生しかねません。「症状が進んでも住み続けられるか」を、契約前に必ず確認してください。
認知症の方のためにつくられた施設です。5〜9人の少人数ユニットで、なじみの職員と顔ぶれの中、家事などをしながら生活します。落ち着いた環境が症状の安定につながりやすいことが最大の利点です。
入居には認知症の診断があり、要支援2以上であることが条件となります。また地域密着型サービスに位置づけられているため、原則としてその市区町村に住民票がある方が対象です。一方で、医療的ケアが必要になった場合や、身体介護の必要度が高くなった場合には対応が難しくなることがあります。
施設ごとの差が最も大きいタイプです。認知症専門のフロアを設けているホームもあれば、穏やかな方に限って受け入れるホームもあります。人員体制が手厚いホームなら、重度化しても住み続けられる可能性が高くなります。「介護付」という名称だけで判断せず、認知症ケアの実績を個別に確認してください。
原則として要介護3以上が対象です。認知症の方も多く暮らしており、費用を抑えて長く暮らす前提なら有力な候補です。ただし夜間の人員体制は施設によって差があるため、夜間の行動が活発な方の場合は個別の確認が必要です。
比較的自立度が高い段階なら候補になりますが、介護サービスは外部契約が基本のため、常時の見守りが必要な状態になると対応が難しくなります。「見守りサービス付き」という表現がどこまでを指すのかを具体的に確認してください。
認知症に加えて医療的ケアが日常的に必要な場合の受け皿です。
受け入れの判断で施設が慎重になるのは、主に次のような症状です。いずれも「絶対に無理」ではなく、体制が整った施設なら対応できます。
※表は横にスクロールできます
| 症状 | 施設が慎重になる理由 | 可能性が高まる条件 |
|---|---|---|
| 外に出て帰れなくなる(徘徊) | 行方不明のリスク。他の入居者の居室へ侵入することもある。夜間は特に人手が足りない | 玄関のセンサー、夜勤者の人数、認知症専門フロアの有無 |
| 昼夜逆転 | 夜勤者の負担が大きく、他の入居者にも影響 | 夜勤の人員が厚い施設、個室で音が響きにくい構造 |
| 暴言・暴力、他の入居者とのトラブル | 他の入居者やスタッフの安全 | 認知症ケアの研修を受けた職員の配置、少人数ユニット |
| 大声を出す | 共同生活への影響 | 居室の遮音性、個別対応ができる人員体制 |
| 不潔行為(排せつ物を触るなど) | 衛生管理と職員の負担 | 排せつケアの体制、経験のある職員 |
| 介護拒否 | 健康管理が難しい | 看護師の配置、協力医療機関との連携 |
| 異食 | 誤飲・窒息のリスクが高く、事故発生時の責任が大きい | 異食の対象や頻度が明確で、見守りの人員がおり、方法が確立している |
※受け入れ可否は症状の頻度・程度・ご本人の状態によって大きく変わります。あくまで一般的な傾向です。
症状を隠して入居させないでください
断られたくない一心で、症状を軽く伝えたくなる気持ちは分かります。しかし入居後に事実が分かれば、結局は退去を求められます。ご本人にとって、短期間での住み替えほど負担の大きいことはありません。正確に伝えたうえで受け入れてくれる施設こそが、長く暮らせる場所です。
「どこも受け入れてくれない」というご相談を承ります
認知症の症状は一人ひとり違い、受け入れ可能な施設もそれぞれ違います。東急線沿線で介護の現場を経験してきた相談員が、ご様子を伺ったうえで受け入れ可能な施設をお探しします。ご相談・見学同行は何度でも無料です。
図3見学で確認する7項目
※老人ホーム見学のチェックリストもあわせてご活用ください。
介護保険施設等では、身体拘束は原則として禁止されています。認められるのは、切迫性・非代替性・一時性という3つの要件をすべて満たす、緊急やむを得ない場合に限られます。
見学の際は、次のように尋ねてみてください。
この質問に対して、手順や委員会の仕組みを具体的に説明できる施設は、日頃からこのテーマに向き合っています。逆に「うちは拘束していません」の一言で終わる場合は、もう一歩踏み込んで聞いてみる価値があります。
ご家族が施設を考え始めるのは、多くの場合「限界が来てから」です。しかし認知症の場合、早めに動くほど選択肢が広いという特徴があります。理由は3つあります。
「まだ大丈夫」と思える段階で情報だけでも集めておくことが、いざというときの選択肢を守ります。
認知症の方の施設探しで大切なのは、「認知症の方を受け入れているか」ではなく「どの症状まで対応できるか」を具体的に確認すること。そして、症状を正確に伝えることです。
この2つを押さえるだけで、断られ続ける状況は変わります。そして施設を選ぶ際は、症状が進んだときにどこまで住み続けられるかを必ず確認してください。ご本人にとって、住み慣れた場所で最期まで過ごせることが何よりの安心につながります。
どこから探せばよいか分からないときは、どうぞご相談ください。
この記事の監修者
東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。
出典・参考
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。受け入れの可否や体制は施設ごとに大きく異なります。実際のご検討にあたっては、各施設の重要事項説明書および担当者への直接の確認をお願いいたします。医学的な判断については主治医にご相談ください。
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