COLUMN

介護と住まいのコラム

施設の選び方 2026.08.18

医療的ケアが必要でも入れる老人ホーム|胃ろう・吸引・在宅酸素への対応

「『胃ろうがあります』と伝えた途端、入居を断られました」——医療的ケアが必要な方の施設探しで、ご家族がまず直面する壁です。ただ、断られ続けるのは探し方の問題であることも少なくありません。この記事では、なぜ断られるのか、どの医療的ケアならどこまで受け入れられるのか、そして見学時に何を確認すれば「本当に対応できる施設」を見分けられるのかを整理します。

この記事の要点

  • 断られる理由は「誰がその医療的ケアを行うのか」という人員の問題です。裏を返せば、体制さえ整えば受け入れられます。
  • 受け入れ範囲を決める最大の要素は、看護師が何時から何時までいるか。日中のみか、24時間常駐か。
  • 可否を分けるのは医療的ケアの種類よりも「1日に何回、何時に必要か」です。問い合わせでは必ず頻度と時間帯まで伝えてください。
  • 「対応できます」は鵜呑みにせず、「現在、同じ医療的ケアが必要な入居者は何名いますか」と実績で聞いてください。

医療的ケアで断られるのはなぜか

施設が医療的ケアのある方の受け入れをためらう理由は、意地悪でも差別でもありません。誰がそのケアを行うのか、という人員の問題に尽きます。

たんの吸引や経管栄養は、原則として医師や看護師が行う医療行為です。介護職員が誰でもできるわけではありません。そのため、看護師が日中しかいない施設では、夜中に吸引が必要な方を受け入れられないのです。「対応したいが体制がない」というのが、断りの本当の理由です。

裏を返せば、体制さえ整えば受け入れられます。断られ続けているとしたら、探す対象がずれている可能性があります。

施設で医療的ケアを行えるのは誰か

受け入れ可否を判断するうえで、この点を理解しておくと施設選びの精度が上がります。

図1施設で医療的ケアを担えるのは、この2者です

  • 看護師

    医療行為全般を担います。看護師が「何時から何時までいるか」が、受け入れ範囲を決める最大の要素です。

  • 訪問看護

    住宅型有料老人ホームやサ高住では、外部の訪問看護が担うのが一般的。訪問の回数と時間帯が決まっているため、「必要なときにすぐ」とはいきません

看護師

医療行為全般を担います。看護師が「何時から何時までいるか」が、受け入れ範囲を決める最大の要素です。日中のみの配置か、24時間常駐か。ここを最初に確認してください。

訪問看護

住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、施設のスタッフではなく外部の訪問看護が医療的ケアを担う形が一般的です。この場合、訪問の回数と時間帯が決まっているため、「必要なときにすぐ」というわけにはいかない点に注意が必要です。

医療的ケア別に見た施設探しの目安

※表は横にスクロールできます

医療的ケア 施設の見つけやすさ 確認すべきポイント
インスリン注射 比較的見つけやすい 血糖測定や注射に対応できるか、本人管理と職員管理のどちらになるか
在宅酸素療法(HOT) 比較的見つけやすい 機器の管理方法、停電時の対応、酸素業者との連携
ストーマ(人工肛門・人工膀胱) 比較的見つけやすい 装具交換は誰が行うか、トラブル時はどう対応するか
胃ろう・経鼻経管栄養 施設によって異なる 夜間、必要な場合も対応できるか
たんの吸引 施設によって異なる 吸引は何回まで対応可能か、夜間、必要な場合も対応できるか
褥瘡(床ずれ)の処置 状況によって異なる 看護師による処置の頻度
導尿・膀胱留置カテーテル 状況によって異なる 定期的な交換を誰がどこで行うか
人工透析 対応できる施設は限られる 透析への送迎はあるか、提携クリニックはあるか
中心静脈栄養(IVH) 対応できる施設はかなり限られる 看護師の配置体制と夜間対応の可否
気管切開・人工呼吸器 対応できる施設は非常に限られる 24時間の医療・看護体制があるか

※あくまで一般的な傾向です。同じ医療的ケアでも、頻度・時間帯・ご本人の状態によって受け入れ可否は変わります。

見落とされがちな「頻度と時間帯」

受け入れ可否を分けるのは、医療的ケアの種類そのものよりも「1日に何回、何時に必要か」です。同じたんの吸引でも、日中に数回で足りる方と、夜間に何度も必要な方では、探すべき施設がまったく違います。問い合わせの際は、必ず頻度と時間帯まで伝えてください。ここを曖昧にすると、入居後に「対応できない」と退去を求められる事態になりかねません。

施設タイプ別の医療対応力

介護医療院

長期的な医療と介護の両方が必要な方のための施設で、医療的ケアへの対応力は最も高い部類です。気管切開や中心静脈栄養など、他では難しいケアの受け皿になります。一方、生活の場としての自由度や居住環境は施設によって差があります。

介護老人保健施設(老健)

医師が常勤し、看護職員も配置されているため医療対応力は高めです。ただし在宅復帰を目的とした施設であり、長期の住まいとしては想定されていません。

介護付有料老人ホーム

施設ごとの差が最も大きいタイプです。看護師24時間常駐のホームなら幅広いケアに対応できますが、日中のみ配置のホームでは受け入れ範囲が限られます。「介護付」という名称だけで判断せず、看護体制を個別に確認してください。

特別養護老人ホーム(特養)

看護職員の配置は日中が中心で、夜間はオンコール(電話待機)対応の施設が多くなっています。そのため夜間に医療的ケアが必要な方の受け入れは難しい傾向がありますが、施設によって体制は異なります。

住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅

医療的ケアは外部の訪問看護が担うのが基本です。訪問看護ステーションが併設されていたり、24時間対応の事業所と提携していたりする物件では、幅広いケアに対応できる場合があります。「どの訪問看護と、どういう契約で連携しているか」を確認するのがポイントです。

断られ続けている、というご相談こそお聞かせください

医療的ケアのある方の施設探しは、条件に合う施設を知っているかどうかで結果が変わります。東急線沿線で介護の現場を経験してきた相談員が、状態を伺ったうえで受け入れ可能な施設をお探しします。ご相談は何度でも無料です。

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「対応できます」を鵜呑みにしない

問い合わせの電話で「対応可能です」と言われても、そこで話を終えないほうが安全です。この言葉には、次のようなグラデーションがあります。

図2同じ「対応できます」でも、中身は4通りあります

  • 実績として日常的に対応している

    現在も同じ医療的ケアの入居者がいる状態。ご家族が求めているのはこれです。

  • 体制上は可能だが実績は少ない

  • 日中なら対応できる

    夜間は不可。

  • 訪問看護が来たときだけ対応できる

※電話口では、この4つがすべて「対応可能」と表現されがちです。だからこそ「現在、同じ医療的ケアが必要な入居者は何名いらっしゃいますか」と実績で聞くのが確実です。

ご家族が求めているのは1番目ですが、電話口ではすべてが「対応可能」と表現されがちです。だからこそ、「現在、同じ医療的ケアが必要な入居者は何名いらっしゃいますか」と実績で聞くのが確実です。

入居後に退去を求められないために

最も避けたいのは、入居後に状態が変わり「うちでは対応できません」と退去を求められることです。契約前に、「どういう状態になったら退去になりますか」と必ず確認し、その答えを重要事項説明書の記載と照らし合わせてください。見学時の確認項目は老人ホーム見学のチェックリストにまとめています。

見学で必ず聞く5つの質問

図3見学のときに、そのまま読み上げられる5つの質問

  • 看護師は何時から何時までいますか。夜間は常駐ですか、オンコールですか 最も重要な質問です ここで受け入れ範囲のほとんどが決まります
  • 現在、同じ医療的ケアが必要な入居者は何名いますか 実績の有無を確認します
  • 夜間に急変した場合、誰がどう判断し、どこへ搬送しますか 協力医療機関との距離と、搬送の実際の流れを聞きます
  • 訪問診療・訪問看護はどこが、週何回来ますか
  • どういう状態になったら退去になりますか

受け入れ先が見つからないときの打ち手

  1. 状態の情報を正確にそろえる
    診療情報提供書、看護サマリー、服薬内容。施設側は情報が曖昧だと安全側に倒して断ります。正確な情報こそが、受け入れの可能性を広げます。
  2. エリアを広げる
    医療対応力の高い施設は数が限られます。条件を緩めるべきは「立地」であって「医療体制」ではありません。隣接する市区まで範囲を広げると、候補が見つかることがあります。
  3. 施設種別の前提を外す
    「有料老人ホームで」と決めつけず、介護医療院や老健も含めて検討します。
  4. 入院中ならMSWと連携する
    病院の医療ソーシャルワーカーは、地域の受け入れ先の実情を把握しています。入院中に退院を迫られたらもあわせてご覧ください。
  5. 紹介サービスを使う
    個別に問い合わせを重ねるより、受け入れ実績を把握している相談員に条件を伝えるほうが早く進むことがあります。

まとめ

医療的ケアのある方の施設探しで決定的なのは、施設の種類でも費用でもなく、「看護師が夜間にいるかどうか」です。ここを軸に候補を絞れば、断られ続ける状況は変わります。

そして、医療的ケアの頻度と時間帯を正確に伝えること。これが遠回りのようでいて、最も確実な近道です。曖昧な情報で問い合わせると断られやすく、仮に入居できても後から食い違いが生じます。

「どこにも受け入れてもらえない」と感じたときこそ、一度ご相談ください。条件の立て方を変えるだけで道が開けることがあります。

この記事の監修者

東急ウェルネス株式会社

老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー

  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)
  • 介護福祉士
  • 社会福祉主事
  • 児童福祉司
  • ホームヘルパー2級

福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。

本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。

出典・参考

※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。医療的ケアの実施体制や受け入れ範囲は施設ごとに大きく異なります。実際のご検討にあたっては、各施設の重要事項説明書および担当者への直接の確認をお願いいたします。

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