COLUMN

介護と住まいのコラム

施設の選び方 2026.08.18

入院中に退院を迫られたら|退院先の決め方と医療ソーシャルワーカーの使い方

「まだ歩けないのに、来週退院と言われた」——私たちに最も多く寄せられるご相談のひとつです。病院からの退院は、ご家族にとってほとんど予告なしにやってきます。この記事では、なぜ病院が退院を急ぐのか、退院先にはどんな選択肢があるのか、そして限られた時間の中で何から手をつければよいのかを整理します。

この記事の要点

  • 「退院してください」は「治療は終わりました。次の段階に進みましょう」という意味です。回復していないのに放り出されるわけではありません。
  • 退院先は自宅だけではありません。実際には5つの選択肢があります。退職を考えるのは、そのあとでも遅くありません。
  • 病院では入院直後から退院後の検討が始まっています。「退院と言われてから探し始めると間に合いません」
  • まず会うべきは医療ソーシャルワーカー(MSW)。待っていても向こうから来るとは限らないので、こちらから声をかけてください。

なぜ病院は「そろそろ退院を」と言うのか

ご家族が冷たいと感じてしまう「退院してください」という言葉。しかし、これは病院が意地悪をしているわけではありません。

脳梗塞や骨折などで最初に運ばれる急性期病院は、命に関わる状態を治療するための場所です。治療が一段落すると、次に必要になるのはリハビリや生活の立て直しであり、それは急性期病院の役割ではありません。そのうえ急性期病院には入院期間の目安が制度上定められているため、次の患者さんを受け入れるためにも、治療が終わった方には次の場所へ移っていただく必要があるのです。

つまり「退院してください」は、「治療は終わりました。次の段階に進みましょう」という意味だと受け取るのが正確です。回復していないのに放り出されるわけではありません。

退職を決めるのは、選択肢を並べてから

退院を告げられた瞬間、「自分が家で看るしかない」と考えて離職を検討される方が少なくありません。しかし、退院先は自宅だけではありません。まずは選択肢を全部並べてから考えても遅くありません。くわしくは親の介護が突然始まったら|最初の1週間にやるべき6つのこともあわせてご覧ください。

退院までのスケジュールは入院初日から動いている

ご家族が「退院」を意識するのは、たいてい医師や看護師から告げられたときです。しかし病院の中では、入院した直後から退院後の見通しについての検討が始まっています

そのため、ご家族が動き出すタイミングが遅れると、選択肢が狭まった状態で決断を迫られることになります。おおまかな流れは次のとおりです。

図1入院から退院までに、病院の中で起きていること

  1. 入院直後 治療 この段階で退院支援の担当者に顔を出しておくのが理想です。
  2. 治療が落ち着く頃 回復の見通しが示される 主治医から見通しが示され、ここで退院先の方向性が決まります。
  3. 退院の2〜3週間前 申し込み・見学・面談 転院先や入居先の手続きを進めます。介護保険の手続きも並行します。
  4. 退院前 退院前カンファレンス 病院・ケアマネジャー・ご家族での打ち合わせです。
  5. 当日 退院

※ご家族が動き出すタイミングが遅れると、選択肢が狭まった状態で決断を迫られることになります。入院した時点で、退院後の相談を始めておくのが最も安全です。

ポイントは、「退院と言われてから探し始めると間に合わない」ということです。入院した時点で、退院後の相談を始めておくのが最も安全です。

まず会うべき人は医療ソーシャルワーカー(MSW)

病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)という、患者さんとご家族の生活面の相談に乗る専門職がいます。多くは社会福祉士の資格を持ち、「地域医療連携室」「患者支援センター」「相談支援室」といった名前の部署にいます。

MSWは、退院後の生活を組み立てるための実務を一手に引き受けてくれる存在です。具体的には次のようなことを相談できます。

  • 退院の見通しと、想定される退院先
  • 回復期リハビリテーション病棟への転院が可能かどうか
  • 介護保険の申請手続き(入院中の申請の進め方)
  • ケアマネジャーの紹介
  • 医療費が高額になる場合の制度(高額療養費、限度額適用認定証など)
  • 施設に移る場合の情報提供

MSWに会うには

病棟の看護師に「退院後のことを相談したいので、ソーシャルワーカーさんとお話ししたい」と伝えれば、面談を設定してもらえます。待っていても向こうから来るとは限りません。こちらから声をかけてください。

MSWに伝えるべき5つのこと

限られた面談時間を有効に使うため、次の点は最初に伝えておくと話が早く進みます。

図2面談の前に、この5つをまとめておいてください

  • 介護できる人がいるかどうか 同居家族の有無、仕事の状況、通える距離
  • 自宅の状況 戸建てかマンションか、階段の有無、エレベーターの有無、寝室の位置
  • ご本人の希望
  • 出せる費用の上限 月々いくらまでか ここを曖昧にすると提案がぶれます
  • 要介護認定の状況 未申請なら、その旨を伝えてください

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退院先の5つの選択肢と比較

退院先は「自宅か施設か」の二択ではありません。実際には次の5つがあります。

※表は横にスクロールできます

退院先 どんな場合に 期間の目安 利用する保険
自宅(介護サービス利用) 身の回りのことがある程度できる/介護できる家族がいる 制限なし 介護保険
回復期リハビリテーション病棟 脳血管疾患や骨折で、集中的なリハビリで回復が見込める 疾患により最大90〜180日程度 医療保険
地域包括ケア病棟 もう少し入院が必要/退院先を決める時間がほしい 最長60日 医療保険
介護老人保健施設(老健) 在宅復帰を目指してリハビリを続けたい 数か月程度 介護保険(要介護1以上)
介護施設(有料老人ホーム等) 自宅での生活が難しく、長期的な住まいが必要 長期・終身 介護保険・医療保険

※回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟には、対象となる疾患や発症からの期間などの入棟要件があります。入れるかどうかは病院のMSWにご確認ください。
※費用や期間は一般的な目安です。

「時間を買う」という発想

退院先を決めきれないとき、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟に移ることで、数十日から数か月の検討時間を確保できる場合があります。リハビリで状態が改善すれば、選べる住まいの幅も広がります。「今すぐ施設を決めなければ」と思い込む前に、この選択肢があるかどうかをMSWに確認してください。

どう決めるか|判断の順序

迷ったときは、次の順番で考えると整理できます。費用や立地から考え始めると、かえって決まりません。

図3この順番で考えると整理できます

  1. 回復の見込みはあるか 主治医に「リハビリでどこまで戻る見込みか」を率直に聞きます。回復が見込めるなら、まずリハビリの選択肢を優先します。
  2. 自宅で暮らせるか 判断材料は「排せつ」「入浴」「食事」「移動」の4つ。特にトイレに自分で行けるかどうかが、在宅継続の分かれ目になります。あわせて、介護するご家族の生活が成り立つかも現実的に見てください。
  3. 医療的なケアが必要か たんの吸引、経管栄養、インスリン注射などが必要な場合、受け入れられる施設は限られます。医療的ケアが必要でも入れる老人ホームで詳しく解説しています。
  4. 費用はどこまで出せるか ご本人の年金と資産から逆算します。老人ホームの費用相場と内訳もご参照ください。
  5. 家族が通える場所か 片道1時間を超えると、面会の頻度は落ちます。

費用や立地から考え始めると、かえって決まりません。この順番でお考えください。

退院日が決まっていても、間に合うことがあります

「来週退院なのに行き先が決まらない」というご相談も承っています。「住まいる」の相談員が、急ぎの状況に合わせて受け入れ可能な施設をお探しします。ご相談・見学同行は何度でも無料です。

無料でご相談する

退院までにやっておくこと

要介護認定を申請する

介護保険のサービスは、要介護認定を受けていないと使えません。認定には原則30日程度かかるため、入院中に申請しておくのが基本です。ただし状態が安定しない時期に認定調査を受けると実態より軽く判定されることがあるため、申請のタイミングはMSWに相談してください。手順は要介護認定の申請方法と流れをご覧ください。

ケアマネジャーを決める

自宅に戻る場合、ケアプランを作るケアマネジャーが必要です。MSWから紹介してもらえるほか、市区町村の窓口や地域包括支援センターでも事業所の一覧をもらえます。

自宅に戻るなら、住まいの手当てをする

介護保険には、手すりの取り付けや段差の解消などに使える住宅改修費の支給(支給限度基準額20万円・自己負担1〜3割)があります。介護ベッドや車いすのレンタルも介護保険の対象です。いずれも要介護認定を受けていることが前提なので、認定申請を先に進めておく必要があります。

退院前カンファレンスに参加する

退院前に、病院スタッフ・ケアマネジャー・ご家族が集まって退院後の生活を確認する場が設けられることがあります。ご家族が不安に思っていることを直接伝えられる貴重な機会です。日程を調整してでも参加することをおすすめします。

焦って決めないための3つのコツ

  1. 「いつまでに決めればよいか」を数字で聞く
    「そろそろ」ではなく「あと何日か」を確認します。期限が分かれば、動き方も決まります。
  2. 候補は必ず2つ以上持つ
    1か所だけに絞ると、断られたときに振り出しに戻ります。並行して申し込んでおくのが実務的です。
  3. 「とりあえず」の選択を恐れない
    老健や地域包括ケア病棟のように、期間を区切って過ごせる場所があります。最初の一手で終の住まいを決める必要はありません。状態が落ち着いてから、あらためて考えれば十分です。

よくあるご質問

退院先が決まらないまま退院日が来たらどうなりますか

まずは主治医とMSWに率直に事情を伝えてください。転院先の調整や入院期間の延長を検討してもらえる場合があります。黙って期限が来るのが最も避けたい形です。あわせて、短期間受け入れてくれる施設(ショートステイなど)を並行して探しておくと安全です。

要介護認定が退院に間に合いません

認定の効力は申請日にさかのぼって発生するため、認定結果が出る前でも「暫定ケアプラン」でサービスを使い始めることができます。ケアマネジャーに相談してください。

本人が「家に帰りたい」と言っています

ご本人の希望は最優先で尊重すべきものですが、介護するご家族の生活が破綻すれば結局その暮らしは続きません。「一度自宅に戻り、無理だと分かった時点で施設を考える」という段取りで合意できることも多くあります。その際は、あらかじめ施設の情報も集めておくと、いざというときに動けます。

医療費が心配です

医療費には高額療養費制度があり、事前に「限度額適用認定証」を用意しておくと窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。手続きは加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合・市区町村の国保など)で行います。MSWに相談すれば案内してもらえます。

まとめ

退院を告げられたときにやることは、突き詰めると「MSWに会う」「要介護認定を申請する」「選択肢を全部並べる」の3つです。この3つに着手すれば、状況は必ず前に進みます。

そして、最初の一手で終の住まいを決める必要はありません。リハビリで回復する方もいれば、数か月後に状況がまったく変わる方もいます。今の時点で最善の選択をして、また考え直せばよいのです。

「住まいる」では、退院を控えた急ぎのご相談も承っています。どうぞお気軽にお声がけください。

この記事の監修者

東急ウェルネス株式会社

老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー

  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)
  • 介護福祉士
  • 社会福祉主事
  • 児童福祉司
  • ホームヘルパー2級

福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。

本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。

出典・参考

※本記事の制度に関する記載は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。入院期間や病棟の入棟要件、各種制度の内容は改正や医療機関の方針により異なります。実際のご判断にあたっては、入院先の医療ソーシャルワーカーおよびお住まいの市区町村の窓口にご確認ください。

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