介護は、多くの場合「ある日突然」始まります。転倒による骨折、脳梗塞での入院、認知症の診断——。心の準備がないまま、病院から「退院後はどうされますか」と聞かれて途方に暮れる。私たちが日々お受けするご相談の多くが、そんな状況からのスタートです。この記事では、混乱しやすい最初の1週間にやるべきことを、優先順位をつけて整理しました。
この記事の要点
目次
最初にお伝えしたいのは、この1週間ですべてを決める必要はないということです。
介護は長く続きます。目の前の判断を焦って下すよりも、「相談できる相手を見つけること」と「使える制度につながること」を優先したほうが、結果的に良い選択にたどりつきます。一人で抱え込まないことが、何よりの近道です。
そのうえで、最初の1週間で手をつけておきたいことが6つあります。
図1最初の1週間でやること
※それぞれの詳しい進め方は、この下で順にご説明します。
介護が始まると、病院・市区町村・ケアマネジャー・施設と、同じ情報を何度も聞かれます。最初にまとめておくと、この先ずっと楽になります。ノート1冊でも、スマートフォンのメモでも構いません。
図2ノート1冊にまとめておきたいこと
※ご本人が話せる状態なら、この段階で一緒に確認しておくことを強くおすすめします。認知症が進んだあとでは、通帳の場所ひとつ分からず手続きが止まってしまうことがあります。
ご本人が話せる状態なら、この段階で一緒に確認しておくことを強くおすすめします。認知症が進んだり、意思疎通が難しくなったりしてからでは、通帳の場所ひとつ分からず手続きが止まってしまうことがあります。
最初に頼るべき窓口が、地域包括支援センターです。市区町村が設置する高齢者のための総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどが無料で相談に応じてくれます。
大切なのは、親御さんが住んでいる地域のセンターに連絡することです(ご自身の住まいではありません)。「〇〇市 地域包括支援センター」で検索するか、市区町村の代表電話に問い合わせれば、担当のセンターを教えてもらえます。自治体によっては「高齢者あんしんセンター」など別の名称で呼ばれています。
遠方に住んでいても大丈夫です
電話での相談も受け付けています。「離れて暮らしていて様子が分からない」という相談は日常的に寄せられており、状況に応じて訪問して確認してもらえることもあります。まずは電話をしてみてください。
介護保険のサービスは、要介護認定を受けていないと使えません。デイサービスも、訪問介護も、介護ベッドや手すりのレンタルも、特別養護老人ホームへの入居もすべて同じです。
認定が出るまでには原則30日程度かかるため、できるだけ早く申請することが大切です。申請先はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センター。費用はかかりません。
「まだそこまでではない」と感じても、申請しておいて損はありません。認定を受けても、サービスを使うかどうかは自由だからです。
親御さんが入院中の場合、病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)や退院支援を担当する看護師がいます。「地域医療連携室」「患者支援センター」といった部署名で置かれていることが多く、退院後の生活について相談できる専門職です。
ここで押さえておきたいのは、病院は思ったより早く退院を勧めてくるということです。急性期の治療が終われば、リハビリ病院への転院か自宅への退院かを決める必要が出てきます。「まだ先の話」と構えていると、突然「来週退院です」と言われて慌てることになりかねません。
入院してすぐの段階で、次のことを相談しておいてください。
介護にかかる費用は、ご本人の年金と資産で賄うことを基本に考えるのが原則です。ご家族が負担する前提で計画を立てると、介護が長引いたときにご家族の生活が先に立ち行かなくなってしまいます。
確認しておきたいのは次の4点です。
この4点が分かれば、「毎月いくらまでなら無理なく払えるか」が計算でき、在宅で続けるのか施設を検討するのかという判断の土台ができます。
認知症が進む前に、お金の話を
認知症が進行して判断能力が失われると、本人名義の預金は原則として引き出せなくなり、施設の契約も難しくなります。成年後見制度など対応の手段はありますが、時間も費用もかかります。話せるうちに確認しておくことが、結果的にご本人の望みを守ることにつながります。
介護が始まった直後、「仕事を辞めて介護に専念しよう」と考える方は少なくありません。しかし、これは最も避けたい選択です。
収入が途絶えれば介護にかけられる費用も減り、選べる選択肢がかえって狭まります。介護が終わったあとの再就職も、簡単ではありません。何より、介護を一人で背負い込む形になり、心身ともに追い詰められやすくなります。
離職を考える前に、まずは勤務先の制度を確認してください。法律で定められた制度がいくつもあります。
図3法律で定められた、勤務先で使える制度
介護休業
対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。雇用保険から介護休業給付金が支給される場合があります。
介護休暇
年5日(対象家族が2人以上なら年10日)まで。時間単位での取得も可能で、通院の付き添いなどに使えます。
勤務時間の調整
短時間勤務等の措置、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限。
※介護休業は「自分が介護をするための休み」ではなく、「仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間」と考えるのが本来の使い方です。
介護休業は「自分が介護をするための休み」ではなく、「仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間」と考えるのが本来の使い方です。ケアマネジャーを決め、サービスを組み立て、必要なら住まいを見直す。その段取りに使う93日、と捉えてください。
なお、2025年4月からは、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認や、40歳到達時などの早期の情報提供が企業に義務づけられています。人事・総務に「介護の制度について教えてほしい」と伝えれば、案内を受けられるはずです。
住まいをどうするか、迷われている段階でご相談ください
在宅で続けられるのか、施設を考えるべきなのか。「住まいる」の相談員が、ご本人の状態とご家族の事情を伺いながら何度でも無料で整理をお手伝いします。強引に施設をおすすめすることはありません。
図4やってはいけない3つのこと
避けてください
代わりに、こうしてください
なお、施設を提案してご本人に拒まれた場合の進め方は、親が施設入居を拒否したら|納得してもらうための伝え方でご説明しています。
介護の始まりは、誰にとっても混乱の時期です。しかし、地域包括支援センターに連絡し、要介護認定を申請する——この2つに手をつけるだけで、状況は確実に前に進みます。
そして、判断に迷うときほど、専門職を頼ってください。介護は情報戦の側面があり、知っているかどうかで負担も費用も大きく変わります。私たち「住まいる」も、住まいに関するご相談の窓口として、いつでもお話を伺います。
この記事の監修者
東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。
出典・参考
※本記事の制度に関する記載は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。制度の内容や運用は改正・地域・勤務先の規定により異なります。実際のお手続きの際は、お住まいの市区町村の窓口、地域包括支援センター、および勤務先の人事担当部署にご確認ください。
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