COLUMN

介護と住まいのコラム

介護の基礎知識 2026.08.14

親の介護が突然始まったら|最初の1週間にやるべき6つのこと

介護は、多くの場合「ある日突然」始まります。転倒による骨折、脳梗塞での入院、認知症の診断——。心の準備がないまま、病院から「退院後はどうされますか」と聞かれて途方に暮れる。私たちが日々お受けするご相談の多くが、そんな状況からのスタートです。この記事では、混乱しやすい最初の1週間にやるべきことを、優先順位をつけて整理しました。

この記事の要点

  • この1週間ですべてを決める必要はありません。優先すべきは「相談できる相手を見つけること」と「使える制度につながること」です。
  • 最初に頼るのは親御さんが住んでいる地域の地域包括支援センター。無料です。
  • 要介護認定は、できるだけ早く申請を。結果が出るまで原則30日程度かかります。
  • 仕事は辞めないでください。まず勤務先の介護休業・介護休暇の制度を確認します。

まず知っておいてほしいこと

最初にお伝えしたいのは、この1週間ですべてを決める必要はないということです。

介護は長く続きます。目の前の判断を焦って下すよりも、「相談できる相手を見つけること」と「使える制度につながること」を優先したほうが、結果的に良い選択にたどりつきます。一人で抱え込まないことが、何よりの近道です。

そのうえで、最初の1週間で手をつけておきたいことが6つあります。

図1最初の1週間でやること

  1. 親の情報を1か所に集める 保険証や通帳の保管場所、かかりつけ医、飲んでいる薬。ご本人が話せる状態のうちに一緒に確認しておきます。
  2. 地域包括支援センターに連絡する 親御さんが住んでいる地域のセンターへ。無料です。遠方にお住まいでも電話で相談できます。
  3. 要介護認定を申請する 結果が出るまで原則30日程度。「まだそこまでではない」と感じても、申請しておいて損はありません。
  4. 入院中なら、退院支援の担当者と早めに話す 病院は思ったより早く退院を勧めてきます。「まだ先の話」と構えていると慌てることになります。
  5. お金の状況を確認する 年金・預貯金・保険・持ち家。ご本人の年金と資産で賄うことを基本に考えます。
  6. 仕事は辞めない。まず会社の制度を確認する 介護休業・介護休暇など、法律で定められた制度があります。

※それぞれの詳しい進め方は、この下で順にご説明します。

①親の情報を1か所に集める

介護が始まると、病院・市区町村・ケアマネジャー・施設と、同じ情報を何度も聞かれます。最初にまとめておくと、この先ずっと楽になります。ノート1冊でも、スマートフォンのメモでも構いません。

図2ノート1冊にまとめておきたいこと

  • 氏名・生年月日・住所・本籍
  • 健康保険証、介護保険被保険者証、マイナンバーカードの保管場所
  • かかりつけ医の名前と連絡先、通院している診療科
  • 飲んでいる薬お薬手帳の写真を撮っておくと確実です
  • 病歴、アレルギー、手術歴
  • 年金の受取口座、預金通帳・印鑑の保管場所
  • 加入している生命保険・医療保険
  • 親族の連絡先

※ご本人が話せる状態なら、この段階で一緒に確認しておくことを強くおすすめします。認知症が進んだあとでは、通帳の場所ひとつ分からず手続きが止まってしまうことがあります。

ご本人が話せる状態なら、この段階で一緒に確認しておくことを強くおすすめします。認知症が進んだり、意思疎通が難しくなったりしてからでは、通帳の場所ひとつ分からず手続きが止まってしまうことがあります。

②地域包括支援センターに連絡する

最初に頼るべき窓口が、地域包括支援センターです。市区町村が設置する高齢者のための総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどが無料で相談に応じてくれます。

大切なのは、親御さんが住んでいる地域のセンターに連絡することです(ご自身の住まいではありません)。「〇〇市 地域包括支援センター」で検索するか、市区町村の代表電話に問い合わせれば、担当のセンターを教えてもらえます。自治体によっては「高齢者あんしんセンター」など別の名称で呼ばれています。

遠方に住んでいても大丈夫です

電話での相談も受け付けています。「離れて暮らしていて様子が分からない」という相談は日常的に寄せられており、状況に応じて訪問して確認してもらえることもあります。まずは電話をしてみてください。

③要介護認定を申請する

介護保険のサービスは、要介護認定を受けていないと使えません。デイサービスも、訪問介護も、介護ベッドや手すりのレンタルも、特別養護老人ホームへの入居もすべて同じです。

認定が出るまでには原則30日程度かかるため、できるだけ早く申請することが大切です。申請先はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センター。費用はかかりません。

「まだそこまでではない」と感じても、申請しておいて損はありません。認定を受けても、サービスを使うかどうかは自由だからです。

④入院中なら、退院支援の担当者と早めに話す

親御さんが入院中の場合、病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)や退院支援を担当する看護師がいます。「地域医療連携室」「患者支援センター」といった部署名で置かれていることが多く、退院後の生活について相談できる専門職です。

ここで押さえておきたいのは、病院は思ったより早く退院を勧めてくるということです。急性期の治療が終われば、リハビリ病院への転院か自宅への退院かを決める必要が出てきます。「まだ先の話」と構えていると、突然「来週退院です」と言われて慌てることになりかねません。

入院してすぐの段階で、次のことを相談しておいてください。

  • 退院の見通しはいつごろか
  • 回復期リハビリテーション病棟への転院という選択肢はあるか
  • 自宅に戻る場合、どんな準備が必要か
  • 自宅が難しい場合、どんな施設が候補になるか

⑤お金の状況を確認する

介護にかかる費用は、ご本人の年金と資産で賄うことを基本に考えるのが原則です。ご家族が負担する前提で計画を立てると、介護が長引いたときにご家族の生活が先に立ち行かなくなってしまいます。

確認しておきたいのは次の4点です。

  1. 毎月の年金受給額(年金振込通知書、または通帳の入金記録で確認できます)
  2. 預貯金の総額
  3. 加入している生命保険・医療保険(入院給付金や介護一時金が出る場合があります)
  4. 持ち家の有無(将来の売却・賃貸という選択肢を含めて)

この4点が分かれば、「毎月いくらまでなら無理なく払えるか」が計算でき、在宅で続けるのか施設を検討するのかという判断の土台ができます。

認知症が進む前に、お金の話を

認知症が進行して判断能力が失われると、本人名義の預金は原則として引き出せなくなり、施設の契約も難しくなります。成年後見制度など対応の手段はありますが、時間も費用もかかります。話せるうちに確認しておくことが、結果的にご本人の望みを守ることにつながります。

⑥仕事は辞めない。まず会社の制度を確認する

介護が始まった直後、「仕事を辞めて介護に専念しよう」と考える方は少なくありません。しかし、これは最も避けたい選択です。

収入が途絶えれば介護にかけられる費用も減り、選べる選択肢がかえって狭まります。介護が終わったあとの再就職も、簡単ではありません。何より、介護を一人で背負い込む形になり、心身ともに追い詰められやすくなります。

離職を考える前に、まずは勤務先の制度を確認してください。法律で定められた制度がいくつもあります。

図3法律で定められた、勤務先で使える制度

  • 介護休業

    対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。雇用保険から介護休業給付金が支給される場合があります。

  • 介護休暇

    年5日(対象家族が2人以上なら年10日)まで。時間単位での取得も可能で、通院の付き添いなどに使えます。

  • 勤務時間の調整

    短時間勤務等の措置、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限。

※介護休業は「自分が介護をするための休み」ではなく、「仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間」と考えるのが本来の使い方です。

介護休業は「自分が介護をするための休み」ではなく、「仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間」と考えるのが本来の使い方です。ケアマネジャーを決め、サービスを組み立て、必要なら住まいを見直す。その段取りに使う93日、と捉えてください。

なお、2025年4月からは、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認や、40歳到達時などの早期の情報提供が企業に義務づけられています。人事・総務に「介護の制度について教えてほしい」と伝えれば、案内を受けられるはずです。

住まいをどうするか、迷われている段階でご相談ください

在宅で続けられるのか、施設を考えるべきなのか。「住まいる」の相談員が、ご本人の状態とご家族の事情を伺いながら何度でも無料で整理をお手伝いします。強引に施設をおすすめすることはありません。

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最初の1週間で「やってはいけない」3つのこと

図4やってはいけない3つのこと

避けてください

  • 勢いで退職届を出す
  • 一人で全部やろうとする
  • 親に無断で家や持ち物を処分する

代わりに、こうしてください

  • まずは会社の制度と、使える介護サービスを確認する(それからでも遅くありません)
  • きょうだいや配偶者に共有し、地域包括支援センターやケアマネジャーを早い段階で巻き込む。「頼れる人リスト」を作るところから
  • ご本人の意思を確認しながら進める(良かれと思っての片づけが、深い不信感につながることがあります)

なお、施設を提案してご本人に拒まれた場合の進め方は、親が施設入居を拒否したら|納得してもらうための伝え方でご説明しています。

まとめ

介護の始まりは、誰にとっても混乱の時期です。しかし、地域包括支援センターに連絡し、要介護認定を申請する——この2つに手をつけるだけで、状況は確実に前に進みます。

そして、判断に迷うときほど、専門職を頼ってください。介護は情報戦の側面があり、知っているかどうかで負担も費用も大きく変わります。私たち「住まいる」も、住まいに関するご相談の窓口として、いつでもお話を伺います。

この記事の監修者

東急ウェルネス株式会社

老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー

  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)
  • 介護福祉士
  • 社会福祉主事
  • 児童福祉司
  • ホームヘルパー2級

福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。

本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。

出典・参考

※本記事の制度に関する記載は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。制度の内容や運用は改正・地域・勤務先の規定により異なります。実際のお手続きの際は、お住まいの市区町村の窓口、地域包括支援センター、および勤務先の人事担当部署にご確認ください。

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