施設探しで最も多いご相談が、費用に関するものです。パンフレットに載っている金額だけを比べても、実際に毎月いくらかかるのかは見えてきません。この記事では、老人ホームの費用がどのような構造になっているのか、月額費用に含まれないものは何か、そして負担を軽くする公的制度にはどんなものがあるのかを、順を追って整理します。
この記事の要点
目次
老人ホームの費用は、入居するときに一度だけ支払う「入居時費用」と、毎月支払う「月額費用」の2つで構成されています。
図1老人ホームの費用は「2階建て」
2階毎月かかる
月額費用
目安:約8〜40万円 / 月
▲ この上に、資料に載っていない実費(おむつ代・医療費など)が加わります
1階入居時に1回
入居時費用(入居一時金など)
公的施設では不要なのが一般的です。民間の有料老人ホームでは、同じホームの中に0円のプランと数千万円のプランが並んでいることもあります。
目安:0円 〜 数千万円
※金額は首都圏における一般的な目安です。1階(入居時費用)が安いプランほど2階(月額費用)が高くなる関係にあります。
特別養護老人ホームなどの公的施設では入居時費用がかからないのが一般的ですが、民間の有料老人ホームでは0円のプランから数千万円のプランまで、同じホームの中でも複数の料金プランが用意されていることがあります。
「入居時0円プラン」は本当にお得か
入居時費用が0円のプランは、そのぶん月額の家賃相当額が高く設定されているのが通常です。短期間なら0円プランが有利ですが、長く住むほど一時金を払ったプランのほうが総額は安くなる、という関係になります。「何年住む想定か」を決めてから比べることが大切です。
有料老人ホームの入居一時金は、多くの場合将来の家賃を前払いするものです。入居時にその一部が「初期償却」として償却され、残りが「償却期間」をかけて毎月少しずつ償却されていきます。償却期間の途中で退去した場合、まだ償却されていない分が返還金として戻ります。
図2入居一時金は、時間とともに「戻る額」が減っていきます
※初期償却20%・償却期間5年とした場合のイメージです。この例では、3年で退去すると前払金の約32%が返還される計算になります。実際の割合と期間は施設ごとに異なり、重要事項説明書に記載されています。
そのため、契約前に次の3点は必ず確認してください。
有料老人ホームには、入居後一定期間(90日以内)に契約を解除した場合、実際に住んだ期間の家賃や実費を除いて前払金が返還されるという短期解約特例(いわゆる90日ルール)が設けられています。「入ってみたら合わなかった」というときの安全弁です。契約書のどこに書かれているか、入居前に確認しておくと安心です。
月額費用は、おおむね次の4つで構成されます。
図3月額費用の4つの内訳
家賃相当額
居室を使うための費用。立地と広さで大きく変わります。
管理費・運営費
共用部の維持、事務、生活支援サービスなどの費用。
食費
1日3食分。多くは1か月あたりの定額です。
介護サービス費
介護保険を使った分の1〜3割が自己負担になります。
※この4つのほかに、実費として上乗せされるものがあります(見落としがちな「月額費用に含まれないもの」)。
このうち、施設タイプによって考え方が大きく異なるのが介護サービス費です。介護付有料老人ホームは要介護度ごとの定額なので月々の見通しが立てやすく、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は使った分だけの従量制なので、介護が重くなるほど費用が上がっていきます。
※表は横にスクロールできます
| 施設タイプ | 入居時費用の目安 | 月額費用の目安 | 費用面の特徴 |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 不要 | 約8〜15万円 | 所得に応じた負担軽減制度が使える |
| 介護老人保健施設 | 不要 | 約8〜17万円 | 在宅復帰が前提。長期利用は想定外 |
| ケアハウス | 0〜数十万円 | 約8〜20万円 | 所得に応じて費用が決まる仕組みがある |
| 介護付有料老人ホーム | 0〜数千万円 | 約20〜40万円 | 介護費が要介護度別の定額で見通しやすい |
| 住宅型有料老人ホーム | 0〜数千万円 | 約15〜35万円 | 介護費は従量制。重度化で上がりやすい |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 敷金(家賃の2〜3か月分程度) | 約15〜30万円 | 初期費用が軽い。介護費は原則従量制 |
| グループホーム | 0〜数十万円 | 約13〜20万円 | 認知症の方向け。比較的費用は抑えめ |
※首都圏における一般的な目安です。同じ種類でも、立地・居室の広さ・人員体制によって金額は大きく異なります。実際の金額は各施設の重要事項説明書でご確認ください。
資料に書かれた月額費用のほかに、実費としてかかるものがあります。ご家族が「思ったより高かった」と感じる原因は、ほとんどがここにあります。
図4資料の月額費用に含まれていない主な実費
※見学や資料請求のときに、この7つが月額費用に含まれるかどうかを確認しておくと、実際の負担額とのずれが小さくなります。
見積もりを取るときのコツ
「月額費用はいくらですか」ではなく、「要介護3の方が実際に1か月で支払っている総額はいくらですか」と聞いてみてください。実費まで含んだ現実的な金額が把握できます。あわせて、要介護5になった場合の見積もりも出してもらうと、将来の負担が見えます。
費用の見通しが立たない、というご相談も承ります
年金と預貯金でどこまで賄えるのか、どのタイプなら無理がないのか。「住まいる」の相談員が、ご家庭の状況にあわせて何度でも無料で整理のお手伝いをします。
1か月に支払った介護サービス費の自己負担額が、所得区分ごとに定められた上限額を超えた場合、超えた分が後から払い戻される制度です。一般的な所得の世帯では月44,400円が上限とされています(現役並みの所得がある方は上限額が高く設定されています)。原則として市区町村から申請案内が届きますが、届かない場合は窓口にご確認ください。対象になる費用とならない費用は高額介護サービス費とは|対象・上限額・申請方法で詳しく解説しています。
所得や預貯金が一定額以下の方について、施設の食費・居住費が軽減される制度です。対象は特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、ショートステイなどで、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は対象外です。この違いは総費用に大きく効いてくるため、公的施設を検討する際は必ず市区町村に相談してください。
1年間(8月〜翌年7月)の医療保険と介護保険の自己負担を合算し、上限額を超えた分が払い戻される制度です。医療と介護の両方の負担が重い方に効果があります。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院の施設サービス費は、一定の範囲で医療費控除の対象になります。また、要介護認定を受けている方は、市区町村から「障害者控除対象者認定書」の交付を受けることで所得税・住民税の障害者控除が受けられる場合があります。見落とされやすい制度なので、確定申告の前に確認しておくと安心です。
資金計画は、次の順番で考えると整理しやすくなります。
図5資金計画を立てる4つのステップ
年金の範囲でどこまで可能かをお知りになりたい場合は、年金だけで入れる老人ホームはある?もあわせてご覧ください。
このとき、ご家族が負担する前提で計算しないことをおすすめします。介護は何年続くか分からないため、ご家族の生活が先に立ち行かなくなってしまうリスクがあるからです。まずはご本人の収入と資産の範囲で成り立つ選択肢を探し、そのうえで足りない分をどうするか考える順番が安全です。
この4つ目の計算は、費用シミュレーションのページでその場で行えます。毎月の収入と使える資産を入れるだけで、無理なく払える月額の目安と、その資産が何年もつかが表示されます。この記事で説明した「月額費用に含まれない実費」も差し引いて計算します。
老人ホームの費用は、掲示されている月額費用だけでは判断できません。入居時費用と月額費用の関係、実費として上乗せされるもの、そして重度化したときの増え方——この3点を押さえて比べることで、はじめて現実的な比較ができます。
また、高額介護サービス費や補足給付など、申請しなければ受けられない制度も少なくありません。「知らずに損をしていた」ということがないよう、市区町村の窓口や地域包括支援センターもあわせてご活用ください。
この記事の監修者
東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。
出典・参考
※本記事の制度・費用に関する記載は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。自己負担の上限額や軽減制度の要件は改正・地域・所得等により異なります。実際のお手続きの際は、お住まいの市区町村の窓口および各施設の重要事項説明書をご確認ください。
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