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「世帯を分けると、親の介護費用が安くなると聞いた」。ご相談でよくうかがうお話です。世帯分離は、住民票の世帯を分ける届出で、親の世帯が住民税非課税になると、介護保険料や施設の食費・居住費が下がることがあります。いっぽうで、上がるものや、使えなくなる仕組みもあります。この記事では、下がる仕組みと計算例、デメリット、夫婦の場合、施設に入るときの住民票、手続きの流れを、表と図で整理しました。
この記事の要点
目次
住民票の「世帯」は、住まいと生計を共にする暮らしの単位です※1。同じ家に親と子が住み、ひとつの財布で暮らしていれば、ひとつの世帯として登録されます。
世帯分離は、この世帯を分けるための届出の通称です。法律上は「世帯変更届」と呼ばれ、世帯に変更があった日から14日以内に、住民票のある市区町村に届け出ることになっています※2。
図1同じ家のまま、住民票の世帯が2つに分かれます
分ける前(1つの世帯)
分けたあと(2つの世帯)
※住んでいる家や部屋はそのままです。変わるのは住民票の上の世帯の区切りです。
介護の場面で世帯分離が話題になるのは、介護保険の負担の多くが、ご本人だけでなく世帯の住民税の課税状況で決まるからです。親の年金が少なく住民税が非課税でも、同じ世帯に住民税を課税されている家族がいると、「課税世帯」として扱われます。
世帯分離は「生計が別であること」が前提です
世帯変更届は、生計を別にした、という事実を届け出るものです。届出のときに暮らしの様子を聞かれ、生計が同じと判断されると、受け付けられないことがあります。介護や医療の負担を軽くする目的で、生計が同じなのに世帯を分ける届出は受け付けない場合がある、と案内している市区町村もあります※3。事実と違う届出は、5万円以下の過料の対象になります※2。
世帯の住民税の課税状況で負担が変わる、介護と医療の主な仕組みは次の4つです。
図2世帯の課税状況で負担が変わる4つの仕組み
| 仕組み | 何を見て決まるか | 世帯を分けると |
|---|---|---|
| 介護保険料 | ご本人の所得と、世帯の課税状況 | 親の世帯が非課税になれば、段階が下がることがある |
| 高額介護サービス費 | 世帯の課税状況と、ご本人の年金収入等 | 上限が月44,400円から月24,600円(条件により月15,000円)に下がることがある |
| 負担限度額認定 | 世帯の課税状況、配偶者の課税状況、預貯金等 | 条件を満たせば、施設の食費・居住費が下がる |
| 高額療養費(70歳以上) | 世帯の課税状況と所得 | 医療費の自己負担の上限が下がることがある |
※介護保険料の金額と段階の分け方は、市区町村ごとに決められています※4。条件の「年金収入等82万6,500円以下」は、保険料では2026年4月から、高額介護サービス費と負担限度額認定では2026年8月からの額です※5※10。
なお、介護保険の負担割合(1〜3割)は、ご本人と、同じ世帯の65歳以上の方の所得で決まります※10。50〜60代のお子さんと世帯を分けても、負担割合は変わりません。
このうち、施設に入るときに金額がいちばん大きく動くのは、負担限度額認定です。特養・老健・介護医療院・ショートステイの食費と居住費が対象で、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の家賃・食費は対象外です※5。

計算の考え方を示すための例です。次のようなご家族で、お母様が特養の多床室に入る場合を考えてみます。
図3特養(多床室)の1か月の費用は、ここまで変わります
※要介護4・自己負担1割・1単位10.00円・30日・加算と日常生活費を除く試算です(2026年8月時点の基準費用額と負担限度額)。分けたあとの金額は、高額介護サービス費で払い戻されたあとの額です。バーの長さは金額の比を表しています。
内訳は次のとおりです。
| 1か月あたり | 同じ世帯のまま | 分けたあと (第2段階) |
|---|---|---|
| 施設サービス費 | 24,060円 (1割) | 15,000円 (上限で頭打ち) |
| 食費 | 46,350円 (1日1,545円) | 11,700円 (1日390円) |
| 居住費 | 27,450円 (1日915円) | 12,900円 (1日430円) |
| 合計 | 97,860円 | 39,600円 |
第2段階になるには、世帯全員が住民税非課税で、ご本人の年金収入等が82.65万円以下、預貯金等が650万円以下(単身の場合)であることなどが条件です※5。年金収入等が82.65万円を超えて120万円以下なら第3段階①で、この例の条件なら月約57,360円になります。段階の決まり方は負担限度額認定とはの記事でご説明しています。
世帯を分けると、お母様の介護保険料の段階も下がることがあります。たとえば東京都葛飾区の令和8年度の保険料では、年金収入等が82万6,500円以下の方は、同じ世帯に住民税を課税されている方がいると年74,088円(第4段階)、世帯全員が非課税なら年18,933円(第1段階)で、年55,155円の差になります※4。段階の数と金額は市区町村ごとに違います。
ただし、保険料の段階はその年度の4月1日の世帯で決まります。年度の途中で世帯を分けても、その年度の保険料は変わらず、変わるのは翌年度からです※4。
世帯分離は、介護保険だけでなく、医療保険や税、勤め先の手当など、世帯を基準にしているほかの仕組みにも同時に効いてきます。下がるものと上がるものを並べると、次のようになります。
図4世帯を分けると、下がるもの・上がるもの
下がることがあるもの
上がる・使えなくなることがあるもの
※どれがどれだけ変わるかは、ご家族の所得や加入している保険によって異なります。
国民健康保険の保険料は、世帯主にまとめて請求されます。市区町村によっては、世帯ごとにかかる部分(平等割)があり、世帯が2つになると合計が上がることがあります。反対に、所得の低い世帯にかかる軽減を受けられるようになり、下がることもあります。軽減の判定は、原則としてその年度の4月1日の世帯で行われます※6。
75歳以上の方が入る後期高齢者医療の保険料は、おひとりごとに計算されますが、所得の低い方への軽減は、世帯主の所得も含めて判定されます。住民税を課税されているお子さんが世帯主だと、親の軽減が受けられないことがあり、世帯を分けると、翌年度(4月1日の判定)から軽減がつくことがあります※6。
高額介護サービス費や高額介護合算療養費などは、同じ世帯の自己負担を合わせて上限と比べられる仕組みです。世帯を分けると、別々の世帯として計算されるため、ご夫婦やご家族の負担を合わせて払い戻しを受けることができなくなります※10。
勤め先の家族手当や扶養手当は、会社ごとの決まりで、住民票の世帯を条件にしていることがあります。勤め先の担当の部署に、世帯を分けたときの扱いを聞いておきましょう。
会社の健康保険の扶養(被扶養者)は、親(父母・祖父母)なら、同じ世帯であることは条件ではありません。扶養に入れるかどうかは、主にお子さんの収入で生計を維持しているかと、親の収入で決まります。いっぽう、配偶者の父母は「同じ世帯であること」が条件のひとつです。なお、75歳以上の方は、健康保険の扶養に入れません※9。
所得税や住民税の扶養控除は、住民票の世帯ではなく、「生計を一にしているか」で判断されます※7。扱いはご家族の暮らしの実態によって違うため、世帯を分ける前に、税務署やお住まいの市区町村の税の窓口で確かめておくと安心です。
別の世帯になると、親の住民票の写しをとるときなどに、委任状が必要になる場面があります。親の代わりに手続きをすることが多いご家族は、あらかじめ覚えておくと慌てずに済みます。
ご夫婦のどちらかが施設に入るとき、「夫婦で世帯を分ければ安くなるのでは」というご相談もいただきます。ですが、負担限度額認定では、世帯が別でも配偶者の住民税の課税状況と預貯金を合わせて判定します※5。
たとえば、夫の年金収入が年290万円、妻が年40万円(ほかに所得なし)のご夫婦では、同じ世帯なら夫の負担割合は1割ですが、世帯を分けると、夫ひとりで判定されて2割になります※10。
ご夫婦の場合は、世帯を分けることよりも、高額介護サービス費や医療費控除など、ほかの仕組みを漏れなく使うことを先に考えたほうが確実です。
親が施設に入るとき、住民票を施設の住所に移すかどうかで、世帯の扱いが変わります。
| 住民票を施設に移す | 住民票を自宅に残す | |
|---|---|---|
| 世帯 | 施設の住所で、ご本人だけの世帯になる | 自宅の家族と同じ世帯のまま(分けるには届出が要る) |
| 介護保険の保険者 | 住所地特例の施設なら、移る前の市区町村のまま | 自宅の市区町村のまま |
| 郵便物 | 施設に届く(転送の手配も) | 自宅に届く |
※住所地特例の対象は、特養・老健・介護医療院と、有料老人ホームなどの特定施設、養護老人ホームです。グループホームや地域密着型の施設は対象外で、施設のある市区町村の介護保険に入ります※8。
住民票を施設に移すと、世帯分離の届出を別に出さなくても、ご本人の世帯は分かれます※8。ただし、負担限度額認定では、別の世帯になっても配偶者を含めて判定されることは変わりません※5。また、税の扶養控除では、老人ホームに入った親は「同居」の扱いにはならず、控除の額が変わることがあります※7。
住民票を移すかどうかは、選挙のお知らせや郵便の届き方、病院の手続きにも関わるため、施設の相談員とも話し合って決めるとよいでしょう。

世帯分離は、住民票のある市区町村の窓口(住民票を扱う課)に届け出ます。届出の流れは次のとおりです。
図5世帯分離の手続きの流れ
届出は、世帯に変更があった日から14日以内です※2。変更する前の日付で、前もって届け出ることはできません。同じ家に住む家族でも、別の世帯の人が代わりに届け出るときは、委任状が必要になります。持ち物や、届け出られる人の範囲は市区町村によって少しずつ違うので、出かける前にホームページか電話で確かめておくと二度手間になりません。
世帯を分けたあと、費用が変わる時期は仕組みによって違います。
| 仕組み | 変わる時期 |
|---|---|
| 負担限度額認定 | 申請した月の1日から(自動では切り替わらないので、分けたあとに申請) |
| 負担割合(1〜3割) | 世帯が変わった日を含む月の翌月から |
| 介護保険料・国保や後期の軽減 | その年度の4月1日の世帯で決まるため、翌年度から |
※市区町村の案内によります※4※5※6※10。高額介護サービス費の区分の切り替わりは、市区町村の介護保険の窓口でお確かめください。

図6世帯分離を決める前のチェック
迷ったときは、お住まいの地域包括支援センターや、担当のケアマネジャーにも相談できます。介護費用を抑えるほかの仕組みは、介護費用を抑える制度一覧にまとめています。
費用の見通しを立ててから、住まいを探せます
「世帯を分けると、施設の費用はいくらになるのか」——住まいるの相談員は、年金や預貯金、使える軽減の仕組みの見通しもうかがいながら、1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の住まいをお探しします。特養の申し込みと並行して、費用の近い施設を探すこともできます。ご相談は何度でも無料です。
実際にご相談いただいた方のお話はお客様の声でご覧いただけます。
同じ家に住んでいても、住民票の「世帯」を2つに分ける届出のことです。たとえば、親と子が同じ世帯から、親の世帯と子の世帯に分かれます。介護保険の負担の多くは世帯の住民税の課税状況で決まるため、親の世帯が住民税非課税になると、介護費用が下がることがあります。
ご本人の所得と預貯金、使っているサービスによって大きく違います。たとえば年金収入が年80万円ほどの方が特養の多床室に入る場合、同じ世帯に住民税が課税されている方がいるときは月約97,860円、世帯を分けて負担限度額認定(第2段階)を受けると月約39,600円が目安です(要介護4・自己負担1割・2026年8月時点)。いっぽうで、国民健康保険料などが上がることもあるので、全体で比べることが大切です。
できる場合があります。住民票の世帯は「住まいと生計を共にする単位」なので、同じ家に住んでいても、生計(暮らしのお金のやりくり)が別であれば、別の世帯として届け出られます。ただし、生活の実態を窓口で聞かれ、生計が同じと判断されると受け付けられないことがあります。
生計が同じと判断される場合です。たとえば、食費や光熱費をひとつの財布でまかなっている、親の収入だけでは暮らしが成り立たず子が生活費をすべて出している、といった場合です。介護費用を下げることだけが目的の届出は受け付けない、と案内している市区町村もあります。
国民健康保険に入っている場合は、世帯が2つになることで保険料の合計が上がることがあります。同じ世帯でなければ高額介護サービス費などの世帯合算ができなくなり、会社の家族手当が対象外になることもあります。65歳以上のご夫婦で分けると、介護保険の負担割合が上がることもあります。下がるものと上がるものの両方を、市区町村の窓口で確かめてから決めると安心です。
世帯を分けたことで、受けられるようにはなりません。負担限度額認定(施設の食費・居住費の軽減)では、世帯が別でも、配偶者(事実婚を含む)の住民税の課税状況と預貯金を合わせて判定します。配偶者が住民税を課税されている場合は、世帯を分けても対象になりません。
所得税や住民税の扶養控除は、住民票の世帯ではなく「生計を一にしているか」で判断されるため、世帯を分けたことだけで決まるわけではありません。扱いは暮らしの実態によって違うので、世帯を分ける前に、税務署やお住まいの市区町村の税の窓口で確かめておくと安心です。
住民票を施設の住所に移すと、世帯分離の届出を別に出さなくても、ご本人の世帯は分かれます。住民票を自宅に残したままなら、同じ家の家族と同じ世帯のままです。特養や有料老人ホームなどに住民票を移しても、介護保険は移る前の市区町村のまま続きます(住所地特例)。グループホームは住所地特例の対象外です。
仕組みによって違います。負担限度額認定は、世帯を分けたあとに申請した月の1日から適用されます。介護保険の負担割合は、世帯が変わった月の翌月から変わります。介護保険料や、国民健康保険・後期高齢者医療の保険料の軽減は、その年度の4月1日の世帯で決まるため、変わるのは翌年度からです。
親(父母・祖父母)が会社の健康保険の扶養に入るのに、同じ世帯であることは条件ではありません。扶養に入れるかどうかは、主にお子さんの収入で生計を維持しているかと、親の収入で決まります。ただし、配偶者の父母は同じ世帯であることが条件のひとつで、75歳以上の方は扶養に入れません。
戻せます。世帯をひとつにまとめる届出(世帯合併)を、市区町村の窓口に出します。分けたときと同じように、変更があった日から14日以内に届け出ます。
世帯分離は、住民票の世帯を分ける届出です。介護保険の負担の多くは世帯の住民税の課税状況で決まるため、親の世帯が非課税になると、介護保険料、高額介護サービス費の上限、施設の食費・居住費が下がることがあります。特養の多床室なら、条件しだいで月5万円ほど変わる計算例もあります。
いっぽうで、国民健康保険料の合計が上がったり、世帯での合算ができなくなったりすることもあり、生計が別であることが前提の届出です。配偶者が住民税を課税されていると、ご夫婦で分けても施設の食費・居住費の軽減は受けられません。決める前に、市区町村の窓口で、下がるものと上がるものの両方を確かめてみてください。
この記事の監修者

東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。相談員のご紹介はこちら
出典・参考
※本記事の内容は、2026年10月時点の情報にもとづいています。世帯分離を受け付けるかどうか、介護保険料や国民健康保険料の額は、市区町村によって異なります。
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