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「最期までお願いできますか」。見学の場で、ご家族が声を落としてお尋ねになる質問です。パンフレットには「看取り対応可」と書かれていても、実際にどこまで対応いただけるかは施設ごとにかなり違います。この記事では、看取りに対応できる施設が備えている条件、施設タイプごとの実情、そしてパンフレットの一行から実態を読み取るための聞き方を、ご家族の立場から整理しました。
この記事の要点
目次
まず前提として、看取りとは、回復を目指す治療ではなく、痛みや苦しさをやわらげながら最期のときまで過ごしていただくことを指します。施設のパンフレットにある「看取り対応可」は、そのための体制を備えているという表示であって、どのような状態になっても必ず建物の中で最期を迎えられる、という約束ではありません。
実際には、次のような場面で入院となることがあります。
「看取り対応可」でも入院となりやすい場面
3つ目が起きやすいかどうかは、夜間の体制で大きく変わります。ここが、施設を見分けるときの中心になります。
施設の側から見ると、看取りに対応するには次の3つがそろっている必要があります。見学のときは、この3つを順に確かめていく形になります。
図1看取りに対応できる施設がそろえているもの
医師との関係
定期的に往診する医師がいて、夜間や休日にも連絡がつくこと。協力医療機関の名前だけでなく、往診の頻度と、夜間にどう連絡がつくかまで確かめます。
看護の体制
看護師が状態の変化に気づき、医師へつなぐ役割を担います。日中だけか、夜間もいるかで、対応できる幅が変わります。
方針の共有
看取りの指針が文書で定められ、ご本人とご家族の意向を確かめる話し合いの場が用意されていること。この3つ目が抜けていると、急な場面で判断が滞ります。
3つ目は見落とされやすいのですが、実際の場面ではここが効いてきます。「どこまでの医療を望まれるか」をあらかじめ話し合っておくと、夜中の電話で急に決断を求められる、という事態を減らせます。近年は人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)という呼び方で、ご本人が将来どのような医療やケアを望まれるかを、ご家族や医療・介護の職員とともに話し合う場を設ける施設が増えています。
看取りの可否を最も左右するのが、夜間の看護体制です。大きく3つに分かれます。
図2夜間の看護体制は3つに分かれます
見学のときは、「夜間は看護師の方がいらっしゃいますか」ではなく、「夜間、看護師の方は建物の中にいらっしゃいますか。それとも呼び出しでしょうか」とお尋ねになると、答えがはっきりします。体制Bの場合は、あわせて「呼んでから、どれくらいで到着されますか」までうかがえると、実際の動きが見えてきます。
体制Bでも看取りに対応している施設は多くあります
オンコールだから対応できない、ということではありません。ふだんから往診の医師と看護師の連携が取れており、職員が状態の変化に気づける体制があれば、体制Bでも落ち着いてお看取りまで進む施設は数多くあります。大切なのは形の名前ではなく、実際にどう動いているかです。だからこそ、次にご説明する実績のたずね方が効いてきます。
施設の種類によって、看取りへの対応のしやすさには傾向があります。
図3種類ごとの看取りへの対応のしやすさ
特別養護老人ホーム
終身にわたるお住まいという位置づけのため、看取りまで対応する施設が多いのが特徴です。夜間は看護師がオンコールという形が一般的です。入居条件と申し込み方法
介護付き有料老人ホーム
施設ごとの差が最も大きい種類です。看護師が夜勤で入る施設もあれば、対応を限っている施設もあります。個別に確かめる価値が最も高いのがここです。介護付きと住宅型の違い
住宅型・サ高住
住まいと医療が切り離されているため、外部の訪問診療・訪問看護の組み方しだいになります。手厚い在宅医療がつけば対応できますが、事前の確認事項は増えます。サ高住の費用と入居条件
グループホーム
少人数で顔なじみの職員が支えるため、住み慣れた場所で最期まで、という考え方に沿いやすい形です。ただし医療体制は施設ごとに差があります。グループホームとは
介護医療院
医師が常勤し、長期の医療的な管理と介護をあわせて受けられます。医療の必要度が高い方の受け皿です。介護医療院とは(用語集)
介護老人保健施設(老健)
在宅復帰を目的とした施設で、基本的には終のすみかとしては位置づけられていません。ただし看取りに対応している老健もあり、施設ごとの差があります。老健とは
種類ごとの費用や入居条件を並べて比べたい場合は、老人ホーム・高齢者向け住宅の種類と違いをご覧ください。医療的な処置が日常的に必要な方は、医療的ケアが必要でも入れる老人ホームもあわせてお読みいただくと分かりやすいと思います。
体制の説明を聞いても、実際に動いているかどうかまでは分かりません。そこで最も確かなのが、実績をうかがうことです。
図4見学のときに、そのまま口に出せる質問
こうしたことは、ご家族からは切り出しにくい話でもあります。私たち相談員が同行する場合は、代わってお尋ねしています。見学全般で見ておきたい点は老人ホーム見学のチェックリストにまとめました。
聞きにくいことは、私たちが代わっておたずねします
最期のことを、ご本人の前でお尋ねするのは気が引けるものです。相談員は、地域の施設がどこまで対応しているかを日ごろから把握しており、見学に同行して代わってうかがうこともできます。まだ先の話、という段階でのご相談も歓迎です。ご相談は何度でも無料です。
実際にご相談いただいた方のお話はお客様の声でご覧いただけます。
看取りの段階に入ると、ふだんの月額に加えて次のような費用が生じます。
看取りの時期にかかるもの
金額の桁が大きく変わるほどではありませんが、月額に上乗せされる形になります。介護保険の自己負担が高くなったときは高額介護サービス費で戻る場合があり、医療費とあわせた負担が重いときは高額医療・高額介護合算療養費という仕組みもあります。全体の費用感は老人ホームの費用相場と内訳をご覧ください。
体制の確認と同じくらい大切なのが、ご本人とご家族の側の準備です。難しく考える必要はなく、次の3点について、ご家族の間でおおよその方向を持っておかれるだけでも違います。
ご家族で話しておきたい3点
すべてを決めきる必要はありません。お気持ちは途中で変わってよいものですし、そのつど施設と話し直せます。大切なのは、話題にしておくこと自体です。話しておいたご家族は、その時が来たときに「これでよかった」と受け止めやすくなります。
違います。「終身利用可」は、原則として終身にわたって利用できる契約形態を指します。ただし、契約上の退去要件が定められている場合もあり、長期の入院や医療の必要度が高まったことをきっかけに、契約が終了したり住み替えになったりすることがあります。「看取り対応可」は最期のときまで施設で過ごしていただく体制があるという意味です。どちらの表示があっても、退去要件はあわせて確かめておかれると安心です。
お元気なうちにご覧になっておくことには、大きな意味があります。看取りの体制が整っている施設は、日ごろの医療との連携も手厚いことが多く、その手前の段階でも安心して過ごしていただけるためです。将来の住み替えを1回減らせる可能性もあります。
もちろんです。ご本人の状態が変われば、お考えが変わるのは自然なことです。多くの施設では、状態の節目ごとに話し合いの場を設けています。そのつどお伝えいただければ、方針は組み直せます。
これまでの暮らしぶりや、以前おっしゃっていたことから、ご家族が推し量る形になります。「本人ならこう言うだろう」という見方を、施設や医師と共有していただくのが一般的です。ご家族だけで抱えず、施設の相談員や医師を交えて話す場を持たれるとよいと思います。認知症でも入れる老人ホームの選び方もあわせてご覧ください。
看取りの体制があること自体で月額が大きく上がるわけではありません。ただ、看護師が夜勤で入るような手厚い体制の施設は、もともとの月額が高めに設定されている傾向はあります。特別養護老人ホームのように、費用を抑えながら看取りに対応している施設もあります。
「看取り対応可」の一行から実態を読み取る鍵は、夜間の看護体制と実際の実績の2つです。看護師が建物内にいるのか呼び出しなのか、昨年は何名の方を見送られたのか。この2つをうかがうだけで、施設ごとの違いがはっきりしてきます。
そして、体制と同じくらい大切なのが、ご本人とご家族のお考えを施設と共有しておくことです。決めきらなくて構いません。話題にしておくことが、その時の判断をご家族だけで背負わずに済むことにつながります。
聞きにくいことは、私たちが代わってうかがいます。まだ先の話という段階でも、どうぞお声がけください。
この記事の監修者
東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。相談員のご紹介はこちら
出典・参考
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な説明です。看取りへの対応の可否、夜間の体制、費用は施設ごとに異なります。実際のご検討にあたっては、各施設の重要事項説明書と看取りに関する指針をご確認ください。医療上の判断については、主治医にご相談ください。
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