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「入院して1か月で、母が歩けなくなってしまった」「退院したけれど、ほとんど横になって過ごしている」。そんなときに起きているかもしれないのが、廃用症候群(体を動かさない状態が続くことで起きる、全身の機能の低下)です。この記事では、起きやすい症状と原因、フレイル・サルコペニアとの違い、回復のためのリハビリを受けられる場所と日数、入院中と退院後に家族ができること、退院後の住まいの考え方を、国の資料をもとにまとめました。

この記事の要点
目次
廃用症候群(はいようしょうこうぐん)は、体を動かさない状態が続くことで起きる、全身の機能の低下のことです。国の資料では「身体の不活動によって引き起こされる二次的な障害の総称」とされ※1、介護予防のマニュアルは「不活発な生活や安静でおきる、全身のあらゆる器官・機能に生じる“心身機能の低下”」と説明しています※2。「廃用」は、使わないことという意味です。
「廃用性症候群」と呼ぶこともあります。厚生労働省は、生活が不活発になることが原因だと分かりやすく伝えるために、「生活不活発病」という呼び方も使っています※3。病気やけがそのものではなく、病気やけがで安静にしていたこと、動かない暮らしが続いたことで起きるのが特徴で、とくに高齢の方に起きやすいとされています※3。
病院の診療報酬の決まりでは、急な病気などで安静にしていたことによって(治療を受けたかどうかは問いません)、日常の動作が一定以上できなくなった状態を、廃用症候群のリハビリの対象としています※4。
廃用症候群は、筋肉だけでなく全身に起こります。国の資料に並ぶ主な症状を、4つに分けると次のとおりです※1※5。
図1廃用症候群で起きやすいこと
筋肉・関節・骨
筋肉がやせて筋力が落ちる、関節が固まって動かしにくくなる(拘縮)、骨がもろくなる。
心臓・肺・血圧
心肺の働きが落ちて疲れやすくなる、起き上がったときに血圧が下がってめまいや立ちくらみが起きる(起立性低血圧)、肺炎にかかりやすくなる。
皮膚・おなか
同じ所に体重がかかり続けてできる床ずれ(褥瘡)、食欲が落ちる、便秘になる。
心と頭の働き
意欲が落ちる、気持ちがふさぐ、頭の働きが落ちて物忘れのように見える。入院中には、急に混乱する「せん妄」が起きることもあります。
※中医協の資料(2015年)、厚生労働省の会議資料(2023年)、生活不活発病のマニュアルによります※1※3※5。
筋力の落ち方について、厚生労働省の会議資料では、ギプスで固定した場合、筋力は1日で1〜4%、3〜5週間で約50%落ちるという報告が紹介されています※5。同じ資料は、長く横になっていると呼吸の働きが落ちて、肺炎にかかりやすく、治りにくい悪い循環に陥るとも指摘しています※5。

廃用症候群のきっかけで多いのは、入院中の安静です。厚生労働省の会議資料では、入院による安静で歩きにくくなったり、足や体の筋力が落ちたりすることを「入院関連機能障害」と呼び、海外の報告では、入院した高齢の方の3〜4割ほどに起きるとされていることが紹介されています※5。起きやすいのは、85歳以上の方、入院の前から日常の動作が落ちていた方、認知機能が落ちている方、栄養状態がよくない方などです※5。国の資料は、要介護の高齢の方が一般の病棟に入院すると、日常の動作や要介護度が悪くなることがあると報告しています※5。
入院だけでなく、家にこもりがちな暮らしもきっかけになります。介護予防のマニュアルは、閉じこもって活動が減ると廃用症候群が起き、さらに心身の力を失って、要介護の状態に進む流れを示しています※2。国の研究会は、必要以上の安静や、手伝いすぎる介護も、廃用症候群を招くおそれがあると指摘しました※11。動けなくなった状態が長く続いたときのことは、寝たきりになったらでまとめています。
似た言葉に、フレイルとサルコペニアがあります。3つは、原因と、見ている範囲が違います※1※2※10。
図2フレイル・サルコペニア・廃用症候群の違い
フレイル
年をとって心身の予備の力が落ち、体だけでなく心や社会とのつながりも弱った状態。要介護の手前の段階です。
サルコペニア
年をとって筋肉の量が減り、筋力や体の機能が落ちた状態。筋肉に焦点を当てた言葉です。
廃用症候群
体を動かさないことで起きる、全身の機能の低下。年齢にかかわらず起き、関節・心肺・心の働きにまで及びます。
※高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン(第3版)、厚生労働省 e-ヘルスネット、中医協の資料、介護予防マニュアル(第4版)の定義によります※1※2※10。
3つは重なり合います。厚生労働省の資料には、フレイルの状態にある高齢の方が肺炎などで入院し、安静が続くと、廃用症候群が重なって体の機能がさらに落ちる流れが描かれています※6。サルコペニアのうち、寝たきりや座りがちな生活などの活動不足で起きるものは、廃用症候群と重なる部分です。フレイルはフレイルとは、サルコペニアはサルコペニアとはでまとめています。
廃用症候群は、動かないことで起きた衰えなので、リハビリで体を動かすことで、少しずつ取り戻せる部分があります。どこまで戻るかは、もとの病気や年齢、入院前の暮らしぶりによって違います。国も、入院してすぐのリハビリを重視していて、2026年6月の診療報酬の改定では、入院してから3日以内に始めるリハビリを、より手厚く評価するようになりました※9。
図3リハビリを受けられる場所と、日数の上限
※日数は、2026年6月の診療報酬の改定のあとの決まりです※4※7。どこへ移るかは、病状や空きによって違うので、病院の医療ソーシャルワーカーと相談して決めます。
2026年度からは、病院で廃用症候群のリハビリを受けている方のうち、介護保険のサービスが必要と思われる方には、ケアマネジャーと協力して、訪問リハビリやデイケアの事業所を紹介することが決まりになりました※9。病院でのリハビリは、回復期リハビリテーション病棟とは・地域包括ケア病棟とは、退院後に施設でリハビリを続ける方法は、老健(介護老人保健施設)とはでまとめています。
廃用症候群は、防いだり、軽くしたりしやすい衰えです。ただし、どのくらい動いてよいかは病状によって違うので、安静の度合いは、医師や看護師に確かめながら進めます※3※5。
図4入院中と退院後に、家族ができること
※厚生労働省の「生活不活発病」の資料をもとに、入院中と退院後のご家族向けにまとめました※3。持病のある方は、主治医の指示を優先してください。

体の機能が落ちたまま退院の時期が来ると、「このまま自宅で暮らせるか」がいちばんの悩みになります。主な選び方は、次の3つです。
退院の時期が迫ったときの進め方は、入院中に退院を迫られたらでまとめています。
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体を動かさない状態が続くことで起きる、全身の機能の低下です。「廃用」は使わないことという意味で、入院中の安静や、家にこもりがちな暮らしがきっかけになります。筋肉が落ちるだけでなく、関節が固まる、立ちくらみ、床ずれ、意欲の低下など、全身に及ぶのが特徴です。
動かないことで起きた衰えなので、リハビリで体を動かすことで、少しずつ取り戻せる部分があります。どこまで戻るかは、もとの病気や年齢、入院前の暮らしぶりによって違います。国も入院してすぐのリハビリを重視していて、病状に合わせて早い時期から体を動かし始めることが大切とされています。
フレイルは、年をとって心身の予備の力が落ち、体だけでなく心や社会とのつながりも弱った、要介護の手前の状態です。廃用症候群は、年齢にかかわらず、体を動かさないことで起きる全身の機能の低下です。フレイルの方が入院して安静が続くと、廃用症候群が重なることがあります。
サルコペニアは、年をとって筋肉の量が減り、筋力や体の機能が落ちた状態で、筋肉に焦点を当てた言葉です。廃用症候群は、動かないことが原因で、筋肉だけでなく関節・骨・心肺・皮膚・心の働きにまで及びます。寝たきりなどの活動不足で起きるサルコペニアは、廃用症候群と重なる部分です。
いちばん多いきっかけは、入院中の安静です。病気やけがで横になっている時間が長くなると、筋肉や関節、心肺の働きが落ちていきます。家にこもりがちな暮らしや、本人ができることまで手伝ってしまう介護で、体を動かす機会が減ることも原因になります。
同じものを指します。廃用症候群は学術的な用語で、厚生労働省は、生活が不活発になることが原因だと分かりやすく伝えるために「生活不活発病」という呼び方も使っています。「廃用性症候群」と呼ばれることもあります。
どのくらい動いてよいかを医師や看護師に確かめ、できる範囲で起きて過ごす時間をつくってもらうことです。面会のときに話しかけたり、リハビリの予定や、退院後に家でできる体操を聞いておいたりするのも役に立ちます。安静の度合いは病状によって違うので、医療者に確かめながら進めます。
入院中は病院のリハビリで受けます。外科手術や肺炎などの治療中の安静で廃用症候群になった方は、回復期リハビリテーション病棟で90日まで、地域包括ケア病棟では入院から60日まで続けられます。退院後は、要介護認定を受けていれば、老健や訪問リハビリ、デイケア(通所リハビリ)で続けられます。
医療保険の廃用症候群のリハビリは、原則として診断から120日までです。それを過ぎると医療保険で受けられる量が限られ、要介護認定を受けている方は、介護保険の訪問リハビリやデイケアに引き継ぐのが基本です。状態の改善が期待できると医師が判断した場合などには、例外もあります。
病名で決まるのではなく、日常生活に介護が必要な状態かどうかで決まります。要介護認定を受ければ、訪問リハビリやデイケア、福祉用具のレンタル、老健などを使えます。40〜64歳の方は、介護が必要になった原因が特定疾病の場合に限られます。
動かない時間が長くなると廃用症候群が進み、さらに動けなくなって寝たきりにつながる、という悪い循環が起きることがあります。国の介護予防のマニュアルも、閉じこもりから廃用症候群、寝たきり(要介護)へ進む流れを示しています。早めに体を動かす機会をつくることが、この循環を断つことにつながります。
廃用症候群は、体を動かさない状態が続くことで起きる、全身の機能の低下です。いちばん多いきっかけは入院中の安静で、筋肉や関節だけでなく、心肺や心の働きにまで及びます。動かないことで起きた衰えなので、病状に合わせて早く体を動かし始め、リハビリを病院から介護保険のサービスへ引き継いで続けることが大切です。
入院中は、どのくらい動いてよいかを医療者に確かめ、退院後は手伝いすぎずに、本人が体を動かす機会を残してください。退院後の住まいに迷ったら、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャー、住まいるの相談員にご相談ください。
この記事の監修者

東急ウェルネス株式会社
老人ホーム紹介サービス「住まいる」 マネージャー
福祉の現場に25年。特別養護老人ホームや有料老人ホームで介護職、生活相談員、ケアマネジャーを務めたのち、施設長、エリアマネージャーとして施設運営に携わってきました。2019年に東急ウェルネスへ入社。現在は老人ホーム紹介サービス「住まいる」のマネージャーとして、ご本人とご家族それぞれのお気持ちをうかがいながら、地域の医療・介護・福祉機関と連携し、納得のいく住まい選びをお手伝いしています。
本記事は、上記監修者が内容を確認したうえで公開しています。相談員のご紹介はこちら
出典・参考
※本記事は、2026年11月時点の公的な資料にもとづいて、介護の相談の立場からまとめたものです。診断や治療、リハビリの内容と安静の度合いについては、主治医や病院の担当者にご相談ください。
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